人の問題とノキアのM&A活動
冨山和彦さんのコーポレート·トランスフォーメーションの三章から人絡みをM&Aで解決する点についての考察です。
若手に修羅場を
以前トップが若い方が良いというの書いたので、(下記のリンクに米中ユニコーンの創業時の年齢を列挙しました。)
今回は日本の人の流入、採用について、知財担当だった時の話から掘り下げてみます。
二三十代で修羅場をくぐれ!と読むと中年には、つらくなりますね。
と吐露したらリツイートしてもらって嬉しい😃自慢です。
でも、修羅場を抜きにしても、年代を除いても人不足は、経営人材だけでなく開発の場でも人の問題は深刻ですという話。
開発者事情
知財担当は発明を刈り取るために開発者とお会いすることが多いですが、
それこそ、ピンキリです。お前はどうなんや?!という当然の疑問は置いておいて、
冨山和彦さんの言う通り、若いその分野を勉強した優秀な技術者と、
ジョブローテーションで最近入った方は比較するのもおこがましい状態の時もありました。
勿論、長年勤めている人にも優秀過ぎる人は居て落下傘として管理職で来られた人格者は、これまでの膠着状況を一度リセットして根こそぎ変えて行きました。
ちなみに、みんながこの人が将来の社長なんだと思っている方です。人次第という身も蓋もない話です。
だから世の中を見ると田舎にある企業には都内の一等地にリクルートのための別の組織や会社を設けています。
もっと分かりやすくシリコンバレーに分署を設けている大企業も珍しく無くなりました。
それだけ優秀な人材をリクルートしたいんでしょうね。
特に、ソフトウェアのある領域では、開発できる人自体が日本の中に片手しかいないとかいう状況もありその人の取り合いで開発スケジュール調整になっているそうです。
もう時効だと思う以前の開発でも、あるポイントを外部委託することにしていたのですが、出来る方の時給が鰻登りに、ボトルネックは強いと感じます。
冨山和彦さんの本の中でも日本の弱みとして、
標準アーキテクチャの設計のような高い次元のソフトウェアや、ソフトウェアサービスのを構築力の低さは昔から指摘されている。
と書かれてました。
実際、システムやAPI が業界を問わず共通になるにつれ人の取り合いになったと聞きます。特に古いバージョンとの整合性を求めると、今回開発出来る能力が有る、前回のシステムを知っている人(前の開発関係者)という凄い狭い範囲で人を探しています。
新貝康司さんの「JTのM&A」日経BPマーケティングのP23にあるように
「人材面での貧者の戦略として時間を買うM&A、究極の経験者採用であるM&Aに取り組み、買収後経営のガバナンスをこらすことで、RJRIとギャラハーの二度にわたる大型買収によって第3位のたばこメーカーに成長した。」
とM&Aを利用しているそうです。そりゃ希少な資産は手の内に囲まないと回らないです。
M&A巧社の日立製作所は下手な投資会社よりシステマチックであると
どこかのTwitterで当業者が述べていましたね。 M&A自体も手の内に囲まないといけなくなりそうです。
今回の参考資料
ノキアの通信基地事業
さて三章ではノキアや、マイクロソフトみたいな旧体ぜんとした組織の方が日本には参考になると書かれていたので、ノキアの反転攻勢をみていきます。
これからコロナ禍の影響で単独では経営出来ない、または時価総額の急落などもあり買収ブームが起こりそうです。M&A巧者は虎視眈々と獲物を探索して居そうです。
自社の業界自体も替える、神戸大学の三品先生の言う転地ですが、
ノキアは製紙会社からゴム、スマホ会社となり、現在は通信基地局の会社だと思っています。
元々はシーメンスと対等に合弁していた分野でした。しかし、シーメンス合弁会社のネットワーク事業はシーメンス側が手を離したがり、前に述べたマイクロソフトへのスマホ事業の売却とほぼ同時期に吸収に動いています。
ちょっとノキアから離れてシーメンス自体の選択と集中の話。時系列で観たCEOと注力している技術を特許出願分類で体系別に表にしたのが下の図です。
2010年前後の当時のシーメンスの特許をみると紫色の無線通信は出願上位ではありません。その前に半導体や、パソコンを売却して関連サービスも外部へスピンアウトしています。
ノキアCEOシラスマの本では、2013/7/1に発表した吸収合併についてp298に
シーメンスとは、三四億ユーロの評価額でなんとか交渉をまとめた。そのうち半分はJPモルガンからのブリッジファイナンスを受けて十二億ユーロを工面し、残り五億ユーロはシーメンスから借り入れる
というM&Aスキームの詳細が書かれてました。
当時、モバイル·ブロードバンドとその関連サービスのみで構成されていたそうなので特許出願分類の上の青色の線も含まれるかもしれません。
そこでノキアは通信規格に関して範囲の経済をとるため後に、シーメンス合弁会社吸収だけでなくアルカテル·ルーセントを170億ドルで買収することになります。
ちなみにシーメンスの分析結果はこちら
話が飛んだので再度、ノキアの日程感をみると
1865年創業時ノキアの地にあった製紙会社、戦後電話および電信ケーブル製造会社であるフィンランド・ケーブルワークス (Finnish Cable Works)を買収し電話交換機用のデジタルスイッチを主力製品となる。
2013年ノキア・シーメンス・ネットワークス(通信機器)をノキア(フィンランド)に合弁の全株売却してノキアとなる。
2015年4月、ノキアはアルカテル・ルーセントを$166億で買収することに合意した。
2016年1月14日、アルカテル・ルーセントとベル研究所は正式にノキアの傘下となった。
因みに買収した会社自体も、
2006年12月1日ルーセント・テクノロジーズはアルカテルと合併しています。
2007年12月、ルーセントのベル研究所の名を残しアルカテルの研究開発部門と合併。
2008年7月時点で、科学雑誌「ネイチャー」は、(ベル研で)物理学の基礎研究を行っている科学者は4人しか残っていない、と指摘した
ので開発する研究所って感じなんでしょうね。
まさに人を獲得するために政府が面倒臭いフランス企業を買収したと見ます。
ノキアの特許出願
知財担当らしく特許をみていきます。
今年初めのノキアの特許件数は29636件でした。
NOKIA を検索すると現在は下記会社が含まれます。
(AT&T) OR ("WSOU INVESTMENTS") OR ("WESTERN ELECTRIC") OR ("PROVENANCE ASSET" OR (LUCENT) OR (ALCANET) OR ("NOKIA BELL LABORATORIES") )
ベル研が含まれるのは、ブランド力としても強いですね。
また、知財をマネタイズ活動も強いです。
SEPの宣言ランキングでもノキアは存在感を有しています。
通信規格2,3,4,5の標準必須特許についてのライセンス活動はノキアとしても、加盟したライセンス会社としても活発です。
有名なアバンシの一員でも有ります。
Companies in the Avanci marketplace:
出典:アバンシのHPより
最近参加メンバーも増えていそうです。欧州の自動車メーカーを中心にライセンスしています。
ここでも非注力領域への対応として参考になると思います。これはライセンサー、ライセンシー共に知財活動の外部化と言えます。
まとめ
人とM&Aの雇用者側の話ばかりなので当事者である被雇用者側の話として面白かった出世の法則をあげます。
小城武彦さんの衰退の法則ではミドルの出世条件が有るので有志は見てみると良いと思います。
衰退惹起サイクルの会社でミドルが出世するには
① 自分の意見を控え、幹部(特に有力者)の意向を忖度してその実現に向けて社内を調整する力
② 派閥・学閥など政治力が強い集団への所属
③ 「出すぎず、気が利く」の3点が特徴
+α優良企業なら
第1には自己の意見・正論を正々堂々と主張し、それを自ら実行する能力であり
第2には衆目が一致する人格・人間性である
が必要な資質のようです。
イケてる会社とイケて無い会社で出世のためのお作法が違うと調査で明らかにしています。
逆にこれまで述べた人の採用側だと
人を採用するためにM&Aするとかは勉強になりますね。ベンチャーを買収するときも条件に○○さんが何年残ることって有るらしいです。
買収先を探すために知財情報を利用するなんて話も珍しくなくなりましたが、買収後の文化的なケミストリーは分かりません。
それなら離れて、別れて管理しないというのは本末転倒ですが、同じ給料体系で来てくれるわけけないわなぁ。
知財分野だと無さそうですが、貴方は余人に変えがたい!言われてみたいですね。
出来る事は目の前の仕事をこなすだけですが、人の増減をこんな目でみると、経営者視点が分かると思います。
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