新紙幣発行開始だから考えたい…旧紙幣の見切りと『デジタル円』の理想像
ついに7月3日、渋沢栄一がデザインになった一万円札を格とする20年ぶりの『改札』が行われた。その一方で、過去に発行された紙幣はいまだに有効という他ならぬ『紙幣のガラパゴス化』が進行している印象もありどこか気持ち悪い。私になじみのある所だと極端な話、岩倉具視の五百円札、伊藤博文の千円札、新渡戸稲造の五千円札、聖徳太子の一万円札・・・そういった古すぎる紙幣がいまだに使用可能と聞いただけで個人の感想的にはガラパゴス化なんてものではない。
この機会でもあるので、日銀も財務省もまだ構想段階と思われる『デジタル円』の導入に向けて次の新紙幣への改札までに入れていくら何でも本腰を入れてくるはずであり、私なりにどんな形が理想なのか書かせてもらいたい。
まず、デジタル円の導入に当たっては、『どの世代までの旧紙幣を使用禁止にするか』という論点が出てくると思う。(会員限定記事だが)東短リサーチの社長さんのコラムに、『改札に当たりどこかで旧紙幣の廃止という線引きはできなかったのか?』という論調があったので、これに賛成する前提での私の考えだと、少なくとも今回の場合であれば一万円札でいえば聖徳太子の代まで、千円札でも伊藤博文の代まで、五千円札に関しては流通量を勘案して新渡戸稲造の代までの紙幣は全部使用廃止にしたうえで新紙幣に強制交換ということはできなかったのか疑問が残る。現金決済の残る国でも改札に関し経過措置を設けて交換義務化というのはどこの国でもやっているのが普通。こんなガラパゴス状態が続くようならかの伝説のトレーダー・藤巻健史氏が論じるのとは別の『円の紙くず化』が現実味を増すのではと思う。
少なくとも20年は先になる次の改札時に臨む話に移すが、日銀も財務省もデジタル円の開発をいち早く急ぎ、少なくとも『福沢諭吉の一万円札までは廃止』したうえで、保有を続ける国民に『新紙幣かデジタル円か』の二択を押し付けることは可能ではないかと思う。どっちも嫌な国民はその時点で『その国民はお金そのものとはさようなら』と突き放したほうが通貨自体の国際信用も上がり国際的通貨ルールへの対応も確実である。
となると、『デジタル円の理想像』をどうするかだが。
スマホのQR一択とかマイナンバーカードへの搭載といった計画が軸のようだが、私ならクレカのようなカードを小学生以上の全国民に発行しデビットカード的な使い方にしたほうが異論は出ないのではと思っている。マイナンバーの紐付けなんて次の次の改札の際に間に合わせればいい。残高照会なんて銀行やコンビニのATMやコンビニ各社の情報ステーション、交通系電子マネーのチャージ機、公営競技のキャッシュレス投票機といったものを改修し活用すれば足りるはず。マイナポータルを駆使するのであれば紐付けが済んだもの以外は照会できないようにすればいいんだし。
ここまで書いたが、『紙幣のガラパゴス化』の解消だけは円の紙くず化を絶対阻止するためにも、国際的に円が『グローバルカレンシー』であり続けるためにももう避けては通れない。仮に東短リサーチの社長の主張をデマだと言うのであれば次回の改札の際に新紙幣かデジタル円かの二択を迫られる見解が出たところで反論は出せるはずだし、反論なくしてデマ呼ばわりあらずということだけは個人の主張として強く口を酸っぱくして言っておきたい。
私の場合、災害時に使えないことを考えた場合安易なキャッシュレス社会の推進は望まないが、今回の新紙幣発行をテコにデジタル円推進の機運が醸成されてほしいことは期待している。どこの経済ニュースもデジタル円の可能性に踏み込んでいないのはそっちはそっちで気持ち悪い。