見出し画像

DV相談のお仕事17

あんな大人にはなりたくないと誓ったあの日。ちょうど今頃、夏の終わりだった。

中学1年生の夏。9月の今頃の時期。2学期が始まってすぐ、わたしは一本の相談電話をかけた。県警の青少年相談センターみたいなところだったと思う。何十年も前の記憶なので定かでない。

当時感じていた漠然とした不安、もやもや感、やるせなさみたいなことをそろそろっと話してみた。

「あなた、そんな些細なこと気にしていたら大人になれないわよ。アッハッハ。」

電話をかけたことが強烈に恥ずかしくなり慌てて電話を切った。今でも、年配の女性の勝ち誇ったような声、繊細さの微塵もない態度、そんなことで電話してきたのかと言わんばかりの圧力。昨日のことのように覚えている。

当時はまだ10代の子どもが相談できる場所なんてほとんどなかったと思う。電話に出た女性も相談員の研修や訓練も受けていない素人だったのではないかと思う。取り敢えず誰か相談対応させておけ、女性ならいいんじゃないか、程度のやっつけ仕事だったのではないだろうか。

夏休み明けの自殺、登校渋り、不登校。今でこそ大きな社会問題だけれど、当時はまだ何としても登校しろ、休むなんてあり得ないと周りの大人も同世代の10代も思っている時代だった。

校則とか無頓着だった。おおまかなところでルールを守っていればOKなのではないかと、あまり些細なことは気にしない中学生だった。先輩の目を気にする同級生が指摘してきた。

「ワンポイントの靴下は大丈夫だけど、ラインソックスはだめ」

そうなのか。知らなかった。面倒くさいな。

細かいことは気にしない、言われるのも嫌な私には驚きの校則ばかりだった。それを読みこなしているんかいと思われる同級生がいるのも驚きだった。

指摘してくるのは友達にはなりたくないタイプの同級生だった。親友はそんなことは言わない。校則も面倒だけど、同期生も面倒だなと思っていた。「先輩に目をつけられるよ」とか放っておいてほしい。先輩は何にも言わなかった。教師に関しては、私は何も注意されなかった。でも私の真似して、本当は校則違反(私も後から知ってビックリ)のダッフルコート着ていた女子は注意されてた。

理不尽、不公平、建前、干渉、監視‥

いろいろわかり始めて、生きづらかったあの頃。忘れてはいけない、感度の高かった自分。

先日、交際相手から暴力を受けている高校生の相談電話を取った。歳を重ねて大胆になり、図々しくなっている私だけどちゃんと聴けただろうか?

「わかった。やってみる」って言ってもらえたけど、物知り顔の嫌な大人になってはいなかったか?

嫌な記憶を敢えて忘れずに留め置く。自分のために、相談者のために。

今日も電話取ってます。


いいなと思ったら応援しよう!