見出し画像

ふか読みの夏

数日前から昨日までは、9月と違わぬ暑さだったけれど、夜に降った雨から冷えた風が流れ込んでいる。
秋だな、とやっと思えるようになって、過ぎた夏を想った。

今年の夏は、感染症にかかって、お盆を跨ぐ十日間を一つの部屋の中で過ごしていた。
異様な暑さ、家族の配慮、初めの数日の熱と、気持ちが落ち込みそうな期間であったにも係わらず、私の夏の思い出はここにある。

一番は、たくさん本を読んだこと。衣食住ならぬ、読食住な十日間。

元から読書好きで同じ本を何度も読み返す私だったが、一気に本棚の本を一周したのではないだろうかというくらいには本を読んだ。
高校生以来読んでいなかった、今の私には少し幼い本を読んでほくほくとした気持ちになったり、大好きな小説に数日かけて浸ったり。あるときは、オーストリアの田舎道を静かに散歩していたり。

もう一つは、たっぷりと文献を読む時間を確保できたこと。

時間に追われることがないと、自分の関心が澄んでよく分かった。
卒業論文のための研究は、急かされると無難な方向に押されてしまう。本当に様々な論文を読みながら、何故か自分探しをしているような気持ちになった。それは、楽しかった。

一部屋の十日間で、私は一体いくつの文字を読み、言葉に触れたのだろう。本当に、読んでばかりだった。ただの大学生の夏休みなら、そうもいかなかったはずだ。負荷は、上手く付き合えばスパイスになる。

愛おしい夏だった。

#夏の思い出

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集