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エッセイ

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楽しいもの、大事なものを見つけて言葉にするのが好きなんです。 「分かる!」も「へー」も嬉しいです。「へー・・・」も、是非。
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#猫

一日の子猫

私は間違えていた。 最寄り駅の駐輪場で生きている美形の猫たち。もう何年もそこを訪れているから、同じ毛色や目の色をした新しい顔の猫を何度も見たし、これまではいなかった顔が仲間に入っていたこともある。 ただ、毛がふわふわとした子猫が、一日で姿を消したのは初めてだった。 駐輪場にいる猫は、誰もが人懐っこいのが特徴だったが、圧倒的に甘え上手な二匹は、まだ恐れを知らないのか、頼りない身体で自転車の隙間を縫ってこちらに近付いてくる。 初めて聞いた高い鳴き声と、足元にすり寄ってくる柔ら

猫さん

素直に猫を尊敬した夕方、私の中で猫は「猫」「猫ちゃん」から「猫さん」になった。 「かっこいい」 祖父母の家の庭を歩いていたら、近所の猫を見つけた。それ自体はよくあることだったけれど、この日の堂々とした姿には感動した。 図々しい。美しい。 私の中で、初めてこの言葉が同居した。 でも、これが一番気持ちいい姿だろうなと思った。 自由なだけでは周りに迷惑をかけるけど、自由な姿で周りを楽しませたり、和ませたり、前向きな影響を与えられたら、何の問題もない。 この美しい猫を始め、

猫がいるなら

あちらこちらにいる猫。 いや、案外同じ猫さんだったりする。 家の近くにいるのはベージュ色の猫と、大きな白い猫。 駅の駐輪場にいるのはいろんな色や模様を持つ家族たち。 私にとっては顔見知りの猫さんたち。 彼らのおかげで、私はある程度きちんと毎日を過ごせている。 家の前の急な坂道を自転車で下る。 しゅーっと、ゆっくりブレーキをかけて、車や近所の人はもちろん、静かな猫がいないか確認。 猫が事故に遭いやすいまっすぐな通りを自転車で走る。 譲る気持ちを持てるくらいには時間の余

のらねこじれんま

駅の駐輪場には野良猫たちが棲みついている。 10匹から15匹くらいの猫が、自転車の下やバイクの足元に、たまにかっぱを入れっぱなしの自転車の籠の上で気持ちよさそうに寝ていることも。 10匹程度だと、3つくらいの家族がいることになる。ああここは親子だなと分かる子もいれば、初めて見る赤ちゃんもいて、つまりはこの駐輪場で家族が増えたり減ったりを繰り返している。 これが、みんなすごく美形の猫で。人間慣れしているからいつも優雅で、美しい。ここ最近で一番色気を感じたのが、猫の1匹が木の