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今日は特別寒い日だ。 昼を過ぎてどんどん空が暗くなると、本当に冷えているのだとこれまでの経験から思う。 14時を過ぎてから、急に太陽が見えるようになって外が明るくなった。 冬の鋭い光だ。 ピンポン チャイムが鳴り、玄関のドアを開けると 「お荷物です」 と段ボール箱を抱える人がいた。 その人の後ろには雪がちらついていた。 温暖なこのまちで、そうか雪が降りだしたのか。 郵便局のその人は見るからに寒そうで、でも明るい声で丁寧に荷物を渡してくれた。 ちょっと眩しい外の
その理科室には、いつも理科の先生がいた。 正確には理科室の隣にある、理科準備室に、いた。 実験器具が並ぶ狭い準備室、そこはいつでもコーヒーの匂いがしていた。 堅苦しい形式だとかを嫌う人だった。 授業をきちんと進めるとか、職員室で先生たちと話すことに こだわっていなかった。 いつも準備室にいて、準備室にすっかり居場所を構えていた。 私はよく理科準備室に行き、先生に分からない問題を聞いていた。 受験生の冬、放課後に過去問を持っていき、一番効率的な解き方や発展させた高度な解
雨の日は一人作業がよくはかどる。 外が雨だからこそ室内が守られているようで、ほっとするのかもしれない。雨音で部屋がいつもより静かに感じられるのかもしれない。 心地よい集中力が続き、ふと顔を上げると部屋が妙に明るい。 外は薄暗く、まだ雨は降り続いている。 雨の空気を吸いたくて、窓を少しだけ開ける。 サーサーという音が大きくなり、少し後に冷たい空気が顔に触れた。 たっぷりとみずみずしい空気を吸い込み、流れに任せて息を吐く。 よし。 窓を閉めると部屋のあたたかさと静かさ、
私の森がある。 陽がたっぷり注ぐ爽やかな森。 あるときは緑が濃くてみずみずしい森。 一人でいるとき、眠れないまま目を閉じたとき、私はそこにいる。 今日も眠れそうにない。とりあえず目をつぶって“何も考えない”と考える。 宇宙のような視界は、気が付いたら森に変わっていた。 誰にも言ったことがないけれど、私は森を知っている。 頭の中の森なのか、瞼の奥の森なのか。その森は意外とすぐに行くことができるのに、とにかく静かなところである。 今いるここは、光の線が美しい森だ。 澄んだ空
ちゃんと色が欲しかった私の色の見え方は、日によって異なっていてあの色はこう見えると断定できない。誰も正解を教えてくれない中、周りとの見え方が違うために困る状況を何とか避けたかった。 これは色彩検定1級だ。 言葉や数値で色を見なければならない。 まともに赤や緑が見えない私に学べるものなのかと思いながらも、知識があればちょっとした武器というか、お守りになってくれるとも思った。 第二性質を学ぶ色彩をふんわりと学ぶことはとても楽しい。 色が好きなら色やその名前が並んだ本を見るの