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森の中

私の森がある。
陽がたっぷり注ぐ爽やかな森。
あるときは緑が濃くてみずみずしい森。
一人でいるとき、眠れないまま目を閉じたとき、私はそこにいる。

今日も眠れそうにない。とりあえず目をつぶって“何も考えない”と考える。
宇宙のような視界は、気が付いたら森に変わっていた。

誰にも言ったことがないけれど、私は森を知っている。
頭の中の森なのか、瞼の奥の森なのか。その森は意外とすぐに行くことができるのに、とにかく静かなところである。

今いるここは、光の線が美しい森だ。
澄んだ空気、遠い鳥の声、黄緑色の景色。

いつものように歩き進む。ただ先に、先に行く。
四方の木々は同じようで、幹の太さや枝の伸ばし方が異なっている。

あっちに行けば何かがある気がして、方向も分からないまま向こうを目指す。

途中でどこかから土を踏む音が聞こえる。茶色い動物がちらっと見えた。

特に眩しい場所では、小さく細い木が光に透けながら立っている。

もう少しで着きそうだ。何があるのか。
少し速足で森を抜ける。


ピピピピピピピ


朝だった。


#眠れない夜に

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