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【社内勉強会】ストレスマネジメント

今回の社内勉強会は、「ストレスマネジメント」をテーマに実施しました。

「うまくストレスと向き合っていくにはどうしたらいいの?」「ストレスは有害なの?」、また「他者と働く上でストレスに関してどのような意識が重要になってくるの?」といった疑問について、1時間の内容をギュッとまとめました。科学知や実際の実験データを用いた興味深い内容になっていますので、ぜひご覧ください!

ストレスとは

そもそもストレスとはなんなのでしょうか?ストレスと聞くとネガティブな出来事を連想することが多いのではないでしょうか?

そもそもストレスという言葉の意味は、英語のアクセントという意味もあり、本来は中立的な意味があります。しかし、最近では世の中でストレスを悪とする風潮が強まっているため、ストレスとネガティブの重なりが強調されている傾向があります。

本来「ストレス」という言葉は物理学で使われており、「物体に圧力を加えることで生じる歪み」のことを意味していました。物理学では、ボールを押さえつける力(ストレッサー)を「ストレス要因」、ストレッサーによるボールの歪みを「ストレス反応」と呼びます。

普段私たちはこの「ストレス要因(ストレッサー)」と「ストレス反応」を区別せずに「ストレス」という言葉を使用しています。

ストレスによるネガティブな影響

ストレスチェックの文脈において「過度なストレス」という表記を見たことがある人もいるのではないでしょうか。

ネガティブな影響として以下の5点が代表例として挙げられます。

・仕事の常習的な欠勤
・仕事のパフォーマンス低下
・認知能力の低下
・うつ病のリスク
・医療費の増加 

また、人の5大死因にはストレスが関わっているとも言われています。

ストレスによるポジティブな影響

ネガティブな結果を連想させることが多いストレスにも以下のようなポジティブな面があることが様々な研究で示されています。

・認知能力・自発性・情緒安定性の向上と関連
---ストレスがかかることによって人は集中する(例:提出期限直前の課題への取り組み)
・生理学的繁栄を促し、治療反応を促進、免疫力を向上させる
---病気に対して一時的に強くなる

このようにポジティブな影響はありますが、だからといって、自分や他者を追い込むために使ってはいけません。


ストレス・マインドセット

ストレスにはネガティブな性質も、ポジティブな性質もどちらもあることがわかりました。

では、ストレスのポジティブな影響と、ネガティブな影響のどちらが引き出されるかを決める要因は何でしょうか?同じようなストレス状況に置かれている人でも、元気な人もいれば、疲弊している人もいるように思います。

そのひとつの要因が「ストレス・マインドセット」と呼ばれるものです。
ストレス・マインドセットは、ストレスの性質に対する個人の捉え方であり、ストレスを有害とする捉え方を「有害マインドセット」、有益とする捉え方を「有益マインドセット」と呼びます。

アメリカで1万人の健康状態を8年間追跡した研究によると、「ストレスを無害」と信じる人は、ストレス量が増加しても死亡率に変化はありませんでした。しかし、「ストレスを有害」と信じる人は、ストレス量が増加すると死亡率が高くなるという研究結果が出ました。(Keller et al.,2012)

加えて、2013年の研究では、個人がストレスを有益と捉えるほど、健康状態や職務遂行、内分泌反応が良好になるという研究結果が出ています。(Crum et al.,2013) 

ストレス・マインドセットは、これまでの人生経験や周りの環境によって形成されますが、ストレスのポジティブな性質に関する科学知に触れることや、そうした自身の体験を思い出すことで、私たちは有益マインドセットを獲得します。こうしたストレスの性質に対する捉え方によって、ポジティブな影響を受けやすくすることができるとわかっています。  


他者と働く上でのストレス

ここまでは自分自身が良い影響を受けるためにはどうしたら良いのかというお話をしてきました。ここからは、他者と働く上でのストレスを解明し、マネジメントにおいてどのような意識が重要になってくるのかについて、考えていきます。

ストレス見積もりの落とし穴

マネジメントにおいて、上司が部下のストレイン(ストレス状況)を適切に推測することは重要です。

上司が部下のストレインを
過小評価すると、、、
過剰な業務負荷を与える判断につながり、部下のストレス反応を高めるリスクがあります。

一方、過大評価すると、、、
過小な業務負荷を与えることにつながり、組織のパフォーマンス低下や、部下の育成機会を損なうリスクがあります。

そもそも上司は、過剰・過大な業務負荷を部下に与えていることに気がついておらず、非自覚的な場合も生じています。

そして、ストレスの見積もりに失敗した例として、パワーハラスメント(パワハラ)があります。

神奈川県職員を対象とした調査の中で、パワハラ被害者が経験した被害内容には、ストレスの過小評価による「過大な要求」だけではなく、過大評価によって仕事を取り上げられたなどの「過小な要求」もあります。
いかに他者のストレスを適切に判断することが重要かこの調査からわかりますが、
残念ながら、他者のストレス状況の推定を扱っている研究結果は多くありません。

厚生労働省の関連団体である労働者健康安全機構が出しているストレスケアのマニュアルにおいても、とても抽象的な内容になっており、部下のストレイン評価のメカニズムや、バイアスに関する記述は見られません。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153867.pdfより

ただ、限られた研究の中でも、
ストレス自体を過小評価する人たちほどうつ病の人の予後を楽観的に予測しているというとても興味深い研究結果がありました。(中村・井澤,2015)

どうやらストレスの捉え方は、他者のストレス状況の推測にも影響を与えているようです。

ストレス・マインドセットと他者のストレイン評価

ここからはストレス・マインドセットと他者のストレイン評価の関係性について研究結果をもとに述べていきます。

ストレス・マインドセットと他者のストレイン評価の関係性について(Ben-Avi et al,2018)
<内容>
ストレス・マインドセットを実験的に誘導した上で、高い負荷状況にある人物(他者)のシナリオを読んだときのシナリオ人物に対するストレイン評価、昇進性・支援意図の評定についての推測を行う

<結果>
ストレスが有益だというマインドセットは、
・高負荷な状況にある他者のストレスを甘く推測してしまい、その他者をサポートする必要性を感じにくい
・「ストレス反応を示していない」ことが「昇進させるべき」シグナルだと暗黙理に捉えている可能性がある

つまり、有益マインドセットの人は、忙しそうな人々を見たときに問題意識を抱かないため、サポートをしようという判断にならない傾向があります。一方で、有害マインドセットの人は、忙しそうな人々を見たときにこのままだと体調を崩してしまうかもしれないという問題意識を抱える傾向があるということです。

これらの傾向をスピーカーの岩本が日本で実験してみたところ、“ストレスの有益性と有害性の両側面を捉えている人”は他者のストレイン評価が高く、適切にストレスを見積もることができていると確認できました(岩本, 2022)。

まだまだ研究が必要ですが、マネジメント⽂脈において、上司がストレスの有益性と有害性の両側⾯を捉えることは、部下の健康保護における適切な判断を導くことに効果的である可能性があると言えそうです。

まとめ

・ストレスにはポジティブな機能もあるが、たとえ同じ状況に置かれていたとしてもポジティブ/ネガティブな反応のどちらかが引き出されるかは「ストレス・マインドセット」(ストレスに関する信念)によって個人差がある
・科学知に基づいてストレス有益マインドセットを身につけることで、ポジティブな効果が期待できる
・ただし、いくら有益マインドセットを持っていても、大きすぎる負荷や、それが持続することはよくない
・ストレス有益マインドセットは他者のストレスを軽く見積もりやすい
・他者のストレスを「うまく」見積もりながら、自身の健康・パフォーマンスを発揮するにはストレスの有害性と有益性どちらも認識している必要がある


いかがでしたでしょうか?
「ストレスは悪いもの」と漠然と考えてしまう傾向がある中で、うまくストレスと向き合っていくにはどうしたら良いのかを認識していただける内容になったのではないかと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!

▼岩本が過去に担当した社内勉強会もぜひご覧ください!^^

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