【映画所感】 RRR ※ネタバレなし
“スペクタル”というフレーズが、頭の中でこだまする。久しぶりに味わったこの感覚。この感動。史実とフィクションを絶妙にブレンドすることで、リピート必至のバディムービーが誕生した。
自分が、スペクタル映画という枕詞を初めて意識したのは、その昔『水曜ロードショー』(日本テレビ)で前後編2週にわたって放映された『ベン・ハー』(1960)だったように思う。
ウィリアム・ワイラー監督、チャールトン・ヘストン主演のこの映画、とてつもないセットとエキストラの数で、当時としては破格の制作費と撮影期間を投じて作られた超がつく娯楽大作だった。
本作『RRR』の制作過程も、『ベン・ハー』と同じような趣を感じてしまう。さらに当時は無かったCG技術を駆使することで、ありえない画角での迫力映像を実現。一時たりともスクリーンから目が離せない。
そう、『RRR』は『ベン・ハー』におけるクライマックス、競走馬のシーンが延々と3時間つづくくらいの贅沢さなのだ。しかも、エンドクレジットまでが最上級のデザート。席を立つまで、手抜き一切無しでもてなしてくれる。
もう、おなかいっぱい。
理不尽に連れ去られた幼い妹を救出に向かう、屈強な男の冒険譚をベースに、イギリスの植民地支配からインドがいかに脱却していくかを、もうひとりの男の視点で克明に記録してゆくストーリー。
二人の男が交わり、義兄弟の契りを結ぶことで起こる奇跡のシナジー。昭和特撮で育った世代からしたら、令和の世に突如インドから届けられた『宇宙鉄人キョーダイン』(©石ノ森章太郎 1976)の世界観なのだ。
主人公の二人、ラーマとビーム。その戦い方からして、まんま「キョーダイン」でのスカイゼルとグランゼルのそれ。ラーマとビームが繰り出す“柔”と“剛”のアンサンブルは、まさにアクションの見本市で、敵味方入り乱れる戦場は、カオスそのもの。
超人的パワーを持つ二人の前では、イギリス軍も為すすべなし。溜飲はこの上なく下がる、下がる。男だらけの暑苦しいストーリーなのに、鑑賞後はなぜか清々しく爽やかな気分になってしまう。
起伏の激しいジェットコースターを乗り終えた心境というより、特殊な航空機によるパラボリックフライト(放物飛行)で感じるゼロG状態。
もちろん経験などないけれど…。
究極の非日常を体験した連帯感からなのか、上映終了後、自然発生的に観客のあいだから拍手が巻き起こった。
これは実際に経験したことだ…!