【映画所感】 ゴジラ−1.0 ※ネタバレ注意

VFX職人、山崎貴の集大成

プロ野球・日本シリーズ第5戦を終え日本一に王手をかけた直後、阪神の岡田彰布監督はインタビューで「次戦では今年の集大成を見せる」と発言した。

翌日、公開初日に本作『ゴジラ−1.0』を鑑賞。

今年の阪神タイガースの集大成を見極めるより一足早く、山崎貴監督作品の集大成を拝ませてもらった。

※阪神タイガース、38年ぶりの日本一おめでとうございます!

で、本作『ゴジラ−1.0』。

物語も佳境に入った終盤、敷島浩一(神木隆之介)が駆る、前翼型の局地戦闘機「震電」がゴジラに向かっていく場面。

海面ギリギリを低空飛行で突っ込んでいくさまは、『永遠の0』(2013)での主人公、宮部久蔵の特攻シーンと重なる。

連合国の接収から免れた駆逐艦「雪風」や「響」の航行の描写、さらには重巡洋艦「高雄」とゴジラの激突など、『アルキメデスの大戦』(2019)を想起させるし、木造船「新生丸」の活躍にいたっては、『海賊とよばれた男』(2016)が脳裏をよぎる。

CG合成により蘇った戦後すぐの銀座の街並みなど、『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)のアップデートにほかならない。

平成から令和にかけてのVFXの進化は、これ以上ないゴジラの“リアル”を誕生させたといっていい。

本編冒頭から、ゴジラは無慈悲なまでに暴れまわる。

ゴジラシリーズのおなじみ、大戸島における零戦整備兵たちとの肉弾戦。ここであらためて思い知らされる。

ゴジラにとって人間は決して餌ではないということを。

捕食するのかと思ったら、逃げ惑う整備兵をひとり、またひとりと咥えては、空高く放り投げる。

この描写だけで、お金を払った価値があるというもの。

個人的には、『ジュラシック・パーク』(1993)のT・レックスよりも、大戸島に現れた若々しいゴジラに純粋な恐怖を感じた。

その後、米軍によってビキニ環礁で行われた「クロスロード作戦」。この核実験の影響で、ゴジラは異常なまでに大きく変貌。そして本土に上陸、東京を蹂躙していく。

最新技術でデジタル処理された“特撮”に関しては、もう圧巻というほかない。

敢えて問題とするなら、やはりドラマ部分か…

家族愛の押しつけと説明セリフ。少し先が読めるような展開に、萎える部分があったのは確か。

中でももっとも気になったのは、佐々木蔵之介演じる、新生丸の艇長・秋津清治。

戦争の生き残りで親分肌、陽キャ代表のような振る舞いは、トラウマを抱え生還した敷島の私生活にもいろいろと注文をつけてくる。

ウザいくらいのおせっかいとセリフのトーンに、不覚にも『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』(1999)のジャー・ジャー・ビンクスを重ねてしまった。

陰キャには堪える演出がつづくので、コミュ障オタクには少々きついのだ。

ただ、一般の観客には、そんなドラマ部分も熱いストーリーとして許容されるだろう。

実際、こころの中で悪態つきながら、途中からは涙が止まらない。

情緒不安定。

なんだかわからないけど、すごい映画を観てしまった。

日本シリーズ第7戦、先発が青柳投手だと知ったとき、諦めの境地にいたったこと。

シェルドン・ノイジー選手のバッティングに関して、シーズン通して懐疑的だったこと。

そして、山崎貴監督。

本当にごめんなさい。

完全に見くびっていました。



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