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【映画所感】 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章 ※ネタバレなし

“あのちゃんの衝撃”再び

現在のフォーマットとは少し違って、朝の大喜利番組としてのテイストが色濃かった頃の『ラヴィット!』(TBS)

2021年10月13日の放送は、同局のバラエティ『水曜日のダウンタウン』のドッキリ企画との連動だった。

アクの強い芸人たちが遠隔で繰り出すトンデモ大喜利回答を、リアルタイムで連発するために、生放送の現場に送り込まれた刺客が、あのちゃんだった。

結果、独特の気だるい雰囲気を全面に押し出した喋り方で、“不思議ちゃん”の形容そのままのあのちゃんが、予想のはるか斜め上をいく回答を量産。

他の出演者のことも時折いじりながら、冷静沈着なMC・川島明に終始冷や汗をかかせるという、まさに伝説の神回となった。

この放送回は、『水曜日のダウンタウン』でのネタばらし回とともに大反響を呼び、あのちゃんの知名度を一気に高めたことは言うまでもない。

この「あのちゃんショック!」とでも言うべき出来事から、約2年半。今や売れっ子となったあのちゃんは、本作『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』において、主人公のひとり中川凰蘭(愛称:おんたん)を演じ、エンディングで主題歌『絶絶絶絶対聖域』まで披露している。

まるで当て書きでもされたかのような、キャラクターとの一体感に、まずは驚かされた。おんたんの声は、あのちゃん以外には考えられないと思わせるほどだ。

一人称が「ぼく」という設定が、これほどまでに似合う役柄も珍しい。進学を控えた高校3年生だけでなく、物語中盤以降の小学生時代の回想も、しっかり“キャラ変”させて使い分ける巧みさ。

あのちゃん、侮れない

さらにもうひとりの主人公、小山門出を演じたYOASOBIの幾田りらの声優としてのポテンシャルも完璧。

才能あるふたりを中心に据えた、インドア全開のサブカル文化系女子5人組による“日常”が、圧倒的クオリティで訴えかけてくる。

 ただ一点、3年前に突如東京上空に現れた異星人?の巨大建造物=宇宙船が頭上にずっと浮かんでいるという“非日常”を無意識のうちに受け容れながら。

壮大なSFの上に成り立った、高校生たちのリアルな毎日が懐かしくもあり、同時にラジカルな感性をも呼び覚ましてくれる。

前章だけに、なかなかストーリーの核心部分には触れてこないが、それでも見せ場は盛りだくさん。

主要キャラ以外は、作画崩壊なのかと錯覚するくらいの絶妙なヘタウマさ加減も気が利いている。

とくに、いじめの主犯格なんて、この程度の描線で十分だ。

現代社会を構成する様々な要素、伏線が後章においてしっかりと回収されていくのだろうと、容易に想像がつく珠玉の演出。もう期待するしかない。

前章だけで、傑作アニメ爆誕と言い切ってもなんら後悔はないし、激賞に値する。

今はただただ、5月24日が待ちきれない。



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