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コスタ=ガヴラス監督『ミッシング』緊迫の社会派スリラー



<作品情報>

73年9月南米チリで起きたクーデターの最中、失踪したアメリカ青年の事件をモデルにした82年度カンヌ映画祭グランプリ受賞作品。製作はエドワード・ルイスとミルドレッド・ルイス、製作総指揮はピーター・グーバーとジョン・ピータース、監督は「Z」のコスタ=ガブラス。トームス・ハウザーの原作に基づき、コスタ=ガブラスとドナルド・スチュワートが脚色した。撮影はリカルド・アロノヴィッチ、音楽はヴァンゲリス、美術はピーター・ジェイミソン、編集はフランソワーズ・ボノが各々担当。出演はジャック・レモン、シシー・スペイセク、メラニー・メイロン、ジョン・シェア、チャールズ・チオッフィなど。

1982年製作/アメリカ
原題または英題:Missing
配給:ユニヴァーサル映画/ポリグラム・ピクチャーズ=CIC
劇場公開日:1982年10月30日

https://eiga.com/movie/49891/

<作品評価>

80点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

おいしい水
素晴らしい!コスタ=ガヴラスの重すぎず、でも観終わってズシンと心にくる作劇が見事です。 
そしてジャック・レモンとシシー・スペイセクも歴史的名演ですね。最初は息子と仲が悪く冷めた目線だったのですが、シシー・スペイセク演じる息子の妻と行動するうちに息子への愛を再確認するのです。
中盤ジャック・レモン演じる父が「一人息子なんだ」と訴えるシーンは泣いてしまいました。
1973年のチリ軍事クーデターを題材にしており、実際にアメリカが1970年の選挙で社会主義政府になったチリ政権に反感を抱き、様々な工作をして軍事クーデターの下地を調えたというのは事実らしいです。
事実を告げようとしないアメリカ政府に腹が立つ一方、妻と義父とが和解する過程を挟み込むことによって更に深み厚みが増しています。
過去シーンの挟み方やセリフではないサスペンス演出は超一級です。ショッキングなシーンも多々ありレベルが高いですね。
やるせないけど妻と義父の毅然とした態度に胸を打たれる傑作です。

吉原
「登場人物の名は変更しているが、事実を忠実に再現している」というナレーションがまず流れます。これから展開される物語が、映画でありながらも実際に起こったことを基にしているのだと感じ、背筋が伸びる思いでした。
その後に描かれるのは、残虐極まりない軍事政権の恐ろしい所業です。どこからともなく聞こえてくる銃声、そして画面に映る軍人の姿に非常な緊張感を覚えました。題材は異なりますが、オーウェン・ウィルソン主演の「クーデター」を思い出す雰囲気がありました。
特に強烈だったのは、主人公が息子を探しに遺体安置所を訪れるシーンです。そこで目にするのは、血を流した遺体が床だけでなく、天井にまでびっしりと並んでいる光景です。映画の中の出来事とはいえ、これも現実に起こったことだと思うと、寒気がしました。
主人公チャールズの父親は、映画の中のキャラクターとして見ると決して好感の持てる人物ではありません。粗野で、息子の妻に対する敬意も欠けています。ですが、このような極限状態に置かれたときに、人間が映画のヒーローのように振る舞えるのかと考えると、そうではないでしょう。彼のように、荒っぽくなってしまったり、苛立ちを隠しきれなかったりするのが現実だと思います。その意味で、ジャック・レモンの演技は非常に素晴らしく、賞に値するものだと感じました。
展開が非常に社会派ドキュメンタリーのようで、手放しで面白いと言えるかどうかは難しいですが、それでも見応えのある作品です。コスタ=ガヴラス監督の他の作品に比べて、レンタルしやすく、比較的観やすいので、ぜひ一度ご覧いただきたいと思います。

<おわりに>

 名匠コスタ=ガヴラス監督作品です。緊迫した空気を保ったまま進む物語に戦慄する一作です。

<私たちについて>

 映画好き4人による「全部みる」プロジェクトは、映画の可能性を信じ、何かを達成したいという思いで集まったものです。詳しくは↓


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