リューベン・オストルンド監督『逆転のトライアングル』容赦ない地獄絵図
<作品情報>
<作品評価>
80点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆
<短評>
上村
前半はすごく楽しかったのに後半で失速…
前半はオストルンドらしい地獄絵図で映像センスも気に入りましたしブラックユーモアも楽しめました。ロシアのマダムが謎の善意で従業員をプールに入れたがるの意味不明で笑ってしまいます。
掃除箱が暴れまわるのもよかったしゲロにまみれたキャプテンズディナーも最高でした。
トイレでゲロに滑りながらずっと吐いてるので不謹慎だけど最高に笑いました。
島についてからはいささか引っ張りすぎかな。金持ちと従業員の立場が逆転するのはいいんですがカールとヤヤ、アビゲイルの三角関係(トライアングル)にあまり興味をそそられなかったです。
ていうかこの邦題ってどうなんでしょうね?
そのまま「哀しみのトライアングル」ではメロドラマみたいになってしまうとかは分かりますが、この邦題だとトライアングルの意味が伝わらなくないですか?
個人的な好みでいうと好きじゃない。『ザ・スクエア』しか他のは観てないですが、オストルンドは合わないっぽいです。
吉原
船の上で何かが起きる映画くらいにしか考えてなかったので、そもそも3章構成ということすら知らないで鑑賞したけど、監督の前作同様面白かった。特に第2章はとてつもなく面白く、ゲラゲラ笑いながら鑑賞してしまった笑笑
一見上品なように見えて下品なのが特徴の本作であるが、公開時期、同等の映画である「バビロン」がシネコンでかかっているというのはもはや奇跡としか言いようがない事態だった。
と、絶賛しているように思えるかもしれないが、不満点もある。第2章が面白かった反面、第3章は退屈に感じた。物語の進行上仕方ないのだが、同様の意見を持った人も多いのではないかと思う。
というのも、監督の前作でも感じた人に対するイライラを感じるポイントがいちばん多いのが、第3章ということもあるからだ。まぁそもそもこの作品が全く合わないという人も多いと思うので、そこばっかりこだわっても仕方ないのかもしれないが…
全体的に見るとすごく好きな作品だったので、また監督の次回作にも期待したい。主演のチャールビ・ディーンが敗血症で亡くなってしまったのは非常に残念。
豚肉丸
リューベン・オストルンド監督の最新作にして最も大規模な作品。それ故に第二幕のゲロ噴射のわかりやすいアクション、説明的な切り返しショットなど、初期作の頃と比べると随分エンタメ寄りな作風にはなったものの、彼が持つ毒々しさは相変わらず。第一部、第二部の前座に重きを置いた結果主題である第三部の印象が薄くなっている印象は否めないが、それまでに描かれていた従業員とセレブ客という主従関係の逆転を描くと同時に、性関係を社会の構図に取り入れることで一元的な社会の構図に囚われていないのも見事。説明的な部分が多くなっているのは確かだが、ラストカットとその終わらせ方が本当に最高なので良かった。
正直言えば監督の前作『ザ・スクエア』の方が好みではあるのだが、本作も昨年公開された映画の中では問答無用の1位に入るぐらいには最高。オストルンド監督の次作にも期待してます。
<おわりに>
アカデミー賞ノミネートもされたオストルンド節全開の人間ドラマです。レビュアーの中でも賛否が分かれる作品です。
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