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デヴィッド・リーン監督『逢びき』儚い不倫の恋
<作品情報>
「アラビアのロレンス」の名匠デビッド・リーンがキャリア初期の1945年に手がけた名作メロドラマ。俳優・作家・演出家としても知られるノエル・カワード製作のもと、カワード作の戯曲「静物画」を映画化。中年の男女の不倫の恋を、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」の調べに乗せて描き、1946年・第1回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた。夫や息子と暮らす平凡な主婦ローラは、毎週木曜に近くの街へ汽車で出かけ、買い物や映画鑑賞をして楽しんでいた。ある木曜の夕方、帰りの汽車を待っていた彼女は、喫茶店で医師アレックと知り合う。その後、食堂でアレックと再会したローラは、彼もまた毎週木曜に友人の代診で街を訪れていることを知る。2人は惹かれ合い、毎週会うようになるが……。1974年にはソフィア・ローレンとリチャード・バートンの共演でテレビ映画としてリメイクされた。
1945年製作/86分/イギリス
原題または英題:Brief Encounter
劇場公開日:1948年5月
<作品評価>
90点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆
<短評>
おいしい水
不倫の恋を儚く、繊細に描いたメロドラマです。
最後のシーンを冒頭に持ってくる円環状の構成、肩に置かれた手など『キャロル』はおそらくかなりこの作品に影響を受けているだろうなと思います。
「普通の人は平穏を幸せと錯覚しているのではないか」という言葉にドキッとしました。
平穏な家庭があること、それは素晴らしいことですが、一度きりの燃えるような恋もまた素晴らしいです。
二人のデートシーンや幻想シーンが切なく、ラフマニノフの音楽も効果的でとても甘美でよくできた作品でした。
吉原
これは愛なのか、それとも罪なのか。
家庭を持ちながらも、どうしようもなく惹かれ合ってしまった二人を描いた物語は、体目的ではなく心で愛し合った、切なくも美しいものです。
冒頭のシーンの意味がラストで明らかになるという手法は、現代の映画でよく見られるものですが、それが1945年に既に使われていたことには驚かされます。
第一回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した作品だけあって、多くの映画に影響を与えてきたのではないでしょうか。
特にラストの別れのシーンや夫のセリフは、鑑賞後1年以上経過した今でも鮮明に思い出され、いまだに余韻に浸れるような印象深いものが多くありました。
<おわりに>
デヴィッド・リーンらしい叙情的で品のあるロマンスです。
<私たちについて>
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