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黒沢清監督『スパイの妻』真実はどこに?緊迫感あふれるサスペンス
<作品情報>
2020年6月にNHK BS8Kで放送された黒沢清監督、蒼井優主演の同名ドラマをスクリーンサイズや色調を新たにした劇場版として劇場公開。1940年の満州。恐ろしい国家機密を偶然知ってしまった優作は、正義のためにその顛末を世に知らしめようとする。夫が反逆者と疑われる中、妻の聡子はスパイの妻と罵られようとも、愛する夫を信じて、ともに生きることを心に誓う。そんな2人の運命を太平洋戦争開戦間近の日本という時代の大きな荒波が飲み込んでいく。蒼井と高橋一生が「ロマンスドール」に続いて夫婦役を演じたほか、東出昌大、笹野高史らが顔をそろえる。「ハッピーアワー」の濱口竜介と野原位が黒沢とともに脚本を担当。「ペトロールズ」「東京事変」で活躍するミュージシャンの長岡亮介が音楽を担当。第77回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。
2020年製作/115分/G/日本
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2020年10月16日
<作品評価>
80点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆
<短評>
おいしい水
銀獅子賞とか抜きにして普通に映画としてめちゃくちゃ面白い!お見事!いや、ほんとにあっという間でした。
戦争の話ではありますが、夫婦の疑心暗鬼合戦がとにかくおもしろいです。とはいえ黒沢清にしては独特のホラー演出はあまりみられなかったのですが、セリフの間や沈黙、カメラワークが素晴らしく、全体に終始漂う不穏感は流石黒沢清といった感じでした。
もちろん蒼井優や高橋一生など役者もいいんですが、演技は極度に形式的な演技をさせており、本質はそこにはないでしょう。逆に言えば紛れもなく黒沢清の作品であり、監督賞というのは納得でした。
海辺で泣く蒼井優に日本の、そして彼女の敗北と虚無感に涙。からの最後の字幕でひっくり返される!字幕だけなのに映像がみえました。
吉原
この作品は日本軍の罪を真っ向から描くという、今の日本映画にはあまり見られないストーリーでこれがテレビ放送されていたのも非常に驚きです。
元がTVドラマだからかその名残を感じるが、犯罪ものとしても恋愛ものとしても十分に楽しめる作品となっています。
特に蒼井優と高橋一生が演じる夫婦は存在感があって素晴らしいです。序盤のシーンはどことなく舞台のような雰囲気もあって、演劇化したら面白いんじゃないかと思いました。
今話題の濱口竜介監督が脚本として参加してることでも有名な作品です。韓国の社会派サスペンスのような雰囲気もあって非常に面白いのでおすすめです。
<おわりに>
黒沢清ならではのケレン味が最高です。誰もが楽しめる傑作サスペンスです。
<私たちについて>
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