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【第25回東京フィルメックス】コウヤ・カムラ監督『ソクチョの冬』清々しい成長物語



<作品情報>

スアは韓国北東部の海辺の町、ソクチョにある小さなホテルで働いている。ソウルから数か月前に故郷に戻った彼女は、ソウルでモデルになりたいと思っているボーイフレンドのジュノと半同棲中。しかし、彼女の慎重に構築された日常は、ロシュディ・ゼムが演じる、ある程度名の知れたフランス人アーティスト、ヤン・ケランドの到着によって乱されてしまう。生前にフランス人の父親に捨てられた経験を持つスアは、ケランドと出会い、長い間彼女の中に埋もれていた感情と疑問を再び芽生えさせる……。エリザ・スア・デュサパンによる同名小説の映画化作品である本作は、若い女性のアイデンティティの探求と受容の過程を繊細かつ親密に捉えた作品。冬のソクチョというロケーションの持つ魅力に加え、アニエス・パトロンによる抽象的なアニメーション・シークエンスの導入も大きな効果をあげている。日系フランス人監督、嘉村荒野の初長編作品で、トロント映画祭のプラットフォーム部門での初上映後、サン・セバスチャン映画祭の新人監督部門でも上映された。

https://filmex.jp/program/fc/fc10.html

<作品評価>

80点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

おいしい水
よかった!フランス人の父を持つ女性が自分のアイデンティティーと向き合っていきます。ソクチョの風景も美しく捉えられていました。
優しく上品な語り口で紡がれていく叙情的な物語に惹かれるものがありました。長編デビュー作とは思えない落ち着いたストーリーテリングが魅力的です。
整形、北朝鮮との非武装地帯など韓国ならではの描写がユニークです。気軽に「あんた整形しないの?」とか聞くほど整形って一般的なんですね。分かってはいましたが当たり前のように口に出されるので笑ってしまいました。
女性の内面を丁寧になぞりながら、フランス人画家との出会いを通して自分を見つめ直していくという物語が見事です。欠点が見出しづらいタイプの作品で、過不足なく語っていく落ち着いた演出がよかったです。
映像が本当に素晴らしく、ソクチョという土地の冬が物語とマッチしていてステキでした。痛みを通して成長する主人公、ラストの清々しい表情が印象的です。

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