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【第25回東京フィルメックス】チウ・ヤン監督『空室の女』降りかかる災難と試練



<作品情報>

40代の主婦、ツァイは人生の目的を失い、大きな精神的崩壊の瀬戸際にいる。映画の冒頭で、彼女は不運な形で年配の女性に怪我を負わせてしまい、入院したその女性の家族から賠償を求められる。この出来事を導入として、私たちは彼女の置かれている状況を目にしていく。夫とは離婚手続き中で、反抗期の娘との間にも深い溝がある。同居中の義母はどうやら認知症を患っており、疎遠になって久しい実父は死期が近いようだ。彼女は、自分の上にのしかかる重荷や憂鬱から逃れようともがいている。この作品は、こうしたツァイの「中年の危機」的状況、ひいては中国の中流階級家庭の機能不全を、4:3の息苦しいフレーミングと撮影監督のコンスタンツェ・シュミットによる美しく憂鬱なイメージによって極めて効果的に語る。映画初出演だという主演のユウ・アイアルの抑えた演技も素晴らしい。カンヌ映画祭の短編部門でパルムドールを受賞した「A Gentle Night」(17)等、一連の短編作品で高い評価を得てきた新鋭チウ・ヤンの長編デビュー作。ベルリン映画祭エンカウンターズ部門で初上映された。

https://filmex.jp/program/fc/fc8.html

<作品評価>

50点(100点満点)
オススメ度 ★★☆☆☆

<短評>

おいしい水
一つ一つのカットはクオリティが高いです。きめ細やかな演出が素晴らしく、平行移動のカメラなど印象的なショットが多かったです。一方で物語として陰鬱すぎて98分なのにとてつもなく長く感じました。
短編パルムドールは伊達じゃないですね。演出力は認めざるを得ません。一人の女性に降りかかる災難と試練を精緻に描いています。計算し尽くされた撮影と全体をコントロールする演出力は素晴らしいです。
しかしやはりこれで98分は辛いです。短い部類のはずなのに体感3時間はありました。話が面白くない、それに尽きる気がします。一つ一つがよくても話に推進力がないので前に転がっていかないです。
明るいシーンが数えるほどしかなく、ほとんど暗い場面で構成されるのも辛いあたりです。陰鬱なトーンで語っていくのは短編ならまだいい。しかし長編でこれをやられると苦行でしかないです。
クオリティは高いと思うものの、話の推進力が弱く陰鬱なのが残念でした。もっと良くなる余地はあると思うのでこれからに期待したいです。

クマガイ
かつて所属していた京都国際学生映画祭の過去入選者であるチウ・ヤン監督の最新作。
監督が学生時代に制作した短編を観たことがあるのですが、長編となると余計に凄いですね。
ウォン・カーウァイを彷彿とさせる煌びやかな色彩と、さながら隠し撮りをしているようなカメラのショットの数々は目を見張るものがあります。
ただ、一枚絵は素晴らしいのですが、いくらなんでも長すぎる。
98分という比較的短い尺でしたが、体感は3時間近い作品を観た気になります。
重ねてにはなりますが、素晴らしいショットの連続なのは間違いないのですが、淡々とそればかりを見せられるのは結構きつかったです。
この監督にはぜひ短編を作り続けてほしいと思いました。

<私たちについて>

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