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ラヴ・ディアス監督『立ち去った女』4時間弱の復讐劇
<作品情報>
各国の映画祭で高い評価を受けるフィリピンの鬼才ラブ・ディアス監督が第73回ベネチア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を受賞した、上映時間3時間48分に及ぶ人間ドラマ。殺人の罪で30年間投獄されていた無実の女ホラシアが出所した。事件の真の黒幕で、彼女を陥れたかつての恋人ロドリゴに復讐するため、ホラシアは孤独な旅に出る。そんな彼女の前に、困っている者、弱い者たちが現れる。貧しい卵売りの男、物乞いの女、心と身体に傷を抱えた謎の女、彼らに手を差し伸べ、惜しみなく愛を注ぐホラシア。そんな彼女を慕う者たちの助けにより、ホラシアは復讐のターゲットとの距離を次第に縮めていく。
2016年製作/228分/フィリピン
原題:Ang babaeng humayo
配給:マジックアワー
劇場公開日:2017年10月14日
<作品評価>
90点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆
<短評>
おいしい水
あっという間の四時間でした。苦しみも優しさも全て含めて人生であり、安定を求めるほどに崩れ、死にたいと思うときほど生きる理由が見つかってしまうのです。
ほとんど固定カメラの長回しからなり、効果音もありません。白黒で刑務所や貧困層の風景を写しているのになんでしょうか、この美しさは。そして画面から滲み出してくるこの哀しさはなんでしょう。
画面に映る全ての人やものは美しく、哀しい。
復讐という目的を掲げながら無関係の貧困層の人々に施しを与えるホラシア。その姿はまるで聖母マリアの如くです。しかし彼女は聖人でしょうか?
それは違いますよね。そもそもの目的は復讐であるし、時には暴力をふるい汚い言葉で罵ります。しかしそれが人間ではないでしょうか。
全てを手に入れることができないのが人間ではないでしょうか。そんな哲学的境地まで至ってしまう素晴らしい作品でした。
吉原
初めてラヴ・ディアス監督の作品を観ましたが、長尺ながらも魅力的な監督だなと思いました。3時間48分、美しいモノクロームとほぼ無音で描かれる物語は必要最低限の情報しか提示されません。しかしながら、それが功を奏してか登場人物たちの特性がより浮き立ち、魅力的な復讐劇に仕上がっています。「固定カメラかつ長回し」というシネフィルの大好物のような作品で、一般受けはあまりしないかもしれませんが、一見の価値は十分にある作品だと思います。観終わった後は、満足感とラヴ・ディアス監督の新作を映画館で体感したいという気持ちに満ち満ちしていること間違いなしです。
<おわりに>
まさに規格外という作品です。人によって評価は変わると思いますが、刺さる人には刺さる一作でしょう。
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