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【最速レビュー】ショーン・ベイカー監督『ANORA アノーラ』現実離れした恋の逃避行の果て
<作品情報>
監督は、「タンジェリン」(15)、「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(17)、カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作「レッド・ロケット」(21)と、アメリカの性産業従事者やマイノリティをユーモアを交えて描き、世界中で称賛を浴びてきたショーン・ベイカー。本作でもNYを舞台に、ロシア系アメリカ人ストリップダンサーの女性主人公のジェットコースターのようなロマンスと騒動を時にユーモラスに、そして真摯に描く。
<作品評価>
90点(100点満点)
オススメ度 ★★★★★
<短評>
クマガイ
釜山国際映画祭にて鑑賞。
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』で知られるショーン・ベイカー監督の最新作です。
本作には、期待を超えてくる面白さがありました。
完全に私事ですが、自分は英語が苦手でリーディングもヒアリングスキルは人並み以下だと思います。
そんな私が本作を英語字幕で見て面白味を感じたのは、素直に凄いことだと思いました。
ショット・脚本・演技すべてを取っても、非常にハイレベルな作品だと感じます。
その中でも特筆すべきは脚本の巧さだと思います。
とにかく勢いが尋常じゃない。
随所に仕込まれるギャグ要素には終始捧腹絶倒でした。
とりわけ中盤はもはやシチュエーションコメディですね。
英語映画でここまで笑かされる作品はこれが最初で最後な気がします。
主人公のマイキー・マディソンをはじめ、アンサンブルを固める全キャストの演技も素晴らしいです。
イゴールを演じるユーリー・ボリソフ(コンパーメントNo.6の人)の、一件抜けているようで一番本質を見ていた演技はピカイチでした。
『フロリダ・プロジェクト』の時も感じたのですが、ショーン・ベイカーの描く、悪意に対するささやかな優しさ(=希望の光)の描写には圧倒されます。
現実離れした逃避行の果てに主人公・アニが行きついた帰着。
目の前で広がるありのままの現実を肯定してくれる他者の存在に気付くエンディングには心を打たれるものがありました。
<おわりに>
気鋭の作家ショーン・ベイカーの新作です。日本では2月28日公開ということで楽しみにしたいところです。
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