【第25回東京フィルメックス】リン・ジェンジエ監督『家族の略歴』侵食されていくある家族
<作品情報>
<作品評価>
80点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆
<短評>
おいしい水
これは面白かった!闖入者ものの新たな秀作と言っていいでしょう。決まった構図の画面を意識しすぎな部分はありますが、映像にこだわりを感じるなかなかの良作です。
円というモチーフが随所に散りばめられています。その意味とは何だろう。始まりも終わりもない円、完璧に見える家族を象徴するモチーフでしょうか。比較的裕福な中流家庭に侵食するシュオ、家族の和に割り込もうとする存在がその円を壊していきます。
闖入者ものというジャンルは昔からありますが、中国を舞台にするとこうなるか、という発見があります。
家族それぞれの思惑と願いが丁寧に描かれていきます。そのストーリーテリングが素晴らしいです。飽きるひまなくシュオが侵食していく様子を描いていきます。そのテンポ感もいいですね。
ウェイとシュオの関係も秀逸です。シュオはウェイになりたかったのかな。『リプリー(太陽がいっぱい)』のような危うさを感じる関係性が面白いです。憎悪と愛情は紙一重。
最後にウェイが見つめるものは何でしょうか。余韻を残す終わり方も秀逸です。あまり期待していなかったが今のところ『黙視録』と本作がトップです。非常に示唆に富み面白い作品でした。
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