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ジャファル・パナヒ監督『人生タクシー』不屈のイラン人監督による人生賛歌


<作品情報>

イランのジャファル・パナヒ監督が、タクシーの乗客たちの様子から、厳しい情報統制下にあるテヘランで暮らす人々の人生模様をドキュメンタリータッチに描き、2015年・第65回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した作品。カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭で受賞歴を誇る名匠で、反体制的な活動を理由に政府から映画監督としての活動を禁じらてもなお、自宅で撮影した映像をもとに映画「これは映画ではない」を発表して話題を集めたパナヒ監督。今作では活気に満ちたテヘランの町でパナヒ監督自らタクシーを走らせ、さまざまな乗客を乗せる。ダッシュボードに置かれたカメラには、強盗と教師、海賊版レンタルビデオ業者、交通事故にあった夫婦、映画監督志望の学生、政府から停職処分を受けた弁護士など、個性豊かな乗客たちの悲喜こもごもが映し出され、彼らの人生を通してイラン社会の核心へ迫っていく。

2015年製作/82分/G/イラン
原題:Taxi
配給:シンカ
劇場公開日:2017年4月15日

https://eiga.com/movie/83248/

<作品評価>

80点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

上村
素晴らしい!これなんですよ!今金熊賞受賞作品として観たかったのは!タクシーの中からほぼ出ないにも関わらず全く飽きることのない卓越した技術で紡がれた人生賛歌。
イランで上映許可が出されるには色々と条件があります。女性はスカーフを被り髪は隠す、暴力シーンはNG、俗悪的リアリティの禁止など。パナヒは政府がNGとする条項を次々と破っていきます。
穏やかな映画であり、辛いと感じさせません。にも関わらず「これが映画だ!」と言わんばかりの反政府メッセージがあります。
編集が本当に素晴らしく、パナヒの姪が持つデジカメとの切り替えにはハッとさせられました。
パナヒ自身の大らかで穏やかな性格、そして秀逸な編集、繊細な演出がバッチリ決まっています。こんな映画パナヒにしかつくれないでしょう。本作に金熊賞をあげた英断に拍手したい気分です。素晴らしい!

クマガイ
やはりジャファール・パナヒ監督ってオンリーワンの才能だと思いますね。
もはやドキュメンタリーなのかどうなのか、その線引きさえ曖昧に感じることができる作品でした。
ほぼ全編が車の中で展開されているにも関わらず、非常に見応えのある約90分だったと感じています。

吉原
監督自身がタクシー運転手になりきり、テヘランの街の人々の掛け合いを描いたドキュメンタリータッチの作品。設定自体面白いですが、監督を含め、イラン国内の映画人が抱えてる問題を作中に絡めてくるところも非常に興味深いです。映画自体はドタバタコメディの様でもありますが、イラン映画界における現状を踏まえてみると社会派ドラマでもあります。ほぼ全編がタクシーの中で展開されるワンシチュエーションドラマなので、観る人を選ぶ作品ではありますが、金熊賞を受賞したのも納得の作品です。

<おわりに>

 軟禁状態になっても映画を発表し続けるパナヒ監督の集大成とも言える快作でしょう。
 群像的に言論統制が厳しいイランを舞台にした社会派ドラマであり、人間讃歌でもあります。金熊賞の面目躍如とも言える作品ではないでしょうか。

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