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【植物の知性#1】 ステファノ・マンクーゾ教授の概要

はじめに

今回ご紹介するのはステファノ・マンクーゾ教授(Stefano Mancuso、1965年5月9日生まれ)。
2012年には、イタリアの新聞「La Repubblica」において「私たちの生活を変えるにちがいない20人のイタリア人」の一人に選ばれている、大注目の研究者です。

イタリアの植物学者であり、「植物の知能(プラント・インテリジェンス)」に関する研究で世界的に知られています。彼は従来の「植物は受動的な存在である」という概念を覆し、植物が環境を感知し、情報を処理し、問題を解決する能力を持つことを科学的に示しました。

現在、フィレンツェ大学 農業・食品・環境・林業分野の教授を務め、植物神経生物学国際研究所(International Laboratory of Plant Neurobiology)の所長を務めています。また、植物シグナル&行動学会(Society of Plant Signaling and Behavior)の運営委員なども務めています。

フィレンツェの街

1. キャリア

学生時代と研究の始まり
マンクーゾ教授は大学時代に植物の研究に興味を持ち、1990年代に植物の行動と知能について研究を始めたようです。彼の研究は、植物が環境と対話し、適応する高度な能力を持つことを示すことに焦点を当てています。

主要な研究機関とプロジェクト

  • 2001年 フィレンツェ大学の教授に就任

  • 2005年 植物神経生物学国際研究所を設立

  • 2010年 TED Globalで「植物の知能」に関する講演を行う

  • 2012年 「Plantoidプロジェクト」に参加し、植物の根の特性を模倣するロボットを開発

  • 2014年 植物バイオミメティクスのスタートアップを設立し、自律型浮遊温室を開発

  • 2017年 著書『Plant Revolution』を発表(英訳版『The Revolutionary Genius of Plants』)

著書(日本語)
NHK出版により、日本語に翻訳された本が2冊あります。(流石はNHK。目の付け所が良きですね。)
今、読んでいるところなので後の記事で紹介できればと思います。

2. 研究分野

2.1 植物の根系と知能

マンクーゾ教授は、植物の根の先端が環境刺激に非常に敏感であることを明らかにしました。根は圧力、温度、音、湿度、損傷などを感知し、情報を処理することで適応行動をとることができます。

2.2 植物の感覚と知覚能力の研究

  • 2004年:植物の根が相互に情報を交換し、動物の脳と似た機能を持つ可能性があることを示唆。

  • 2012年:植物の根が音の方向を感知する受容体を持つことを発見。

  • 2008年:水不足に陥った樹木が超音波を発することが確認され、これが単なる物理的な現象以上の役割を持つ可能性が示された。

2.3 地球環境における植物の役割

マンクーゾ教授は、植物が地球環境のバランスを維持する重要な役割を担っていると考えています。

  • 炭素吸収源としての機能

  • 光合成による持続可能なエネルギー生産

  • 細菌や菌類との共生による環境適応能力

3. 植物と動物の比較

マンクーゾ教授は、植物と動物の違いを以下のように説明しています。

3.1 循環系の違い

  • 動物は目・耳・皮膚・舌などに感覚受容体が集中しているのに対し、植物は全身に感覚受容体が分布し、環境を総合的に認識している。

3.2 コミュニケーションと防御

  • 植物は「匂い」や「音」を感知し、他の植物と情報を交換する能力を持つ。

    • 例:リママメはハダニに襲われると捕食性ダニを引き寄せる化学物質を放出。

4. 物議を醸す「植物の意識」説

マンクーゾは、「植物は分散型の知能を持ち、情報処理を全身で行う」と主張。

これに対し、主流の科学者たちは「脳やニューロンがないため、植物には意識がない」と否定しています。しかし、マンクーゾの研究は、植物の知能研究の最前線を切り拓き、新たな科学的枠組みを構築し続けています。

まとめ・感想

教授の研究は、植物が単なる受動的な存在ではなく、環境を感知し、問題を解決する能力を持つ生物であることを示しています。

そして、動物の脳と似た機能を持つ可能性があることなど。常識を覆す、仮説と研究による実証に驚きを覚えました。

次回の記事では、「TED・BBVAで語られた植物の知性」について詳しく解説していきます。どうやら、植物にも人間同様に、記憶力があるようなのです!
こちらから、どうぞご覧ください。

余談 日本の生活文化と植物

日々、当たり前のように目にする植物に想いを馳せることは、これまで当然だと思っていたことを疑うきっかけになりました。例えば、今私が作業している和室の部屋も、木の柱・天井、畳、障子の襖、本棚など、すべて植物からできている。ということに意識を向けるきっかけになったのです。

日本人にとって、それはあまりにも当たり前すぎることですが。これまでの常識を見直し、植物を知性ある存在として再認識することで、より一層、全ての事象や取り巻く環境に、感謝の気持ちが増している感覚があります。

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