マガジンのカバー画像

ストーリィドロップス

20
不定期マガジン「ストーリィドロップス」 ちょっと何か読みたい時に、小粒な短編小説集。
運営しているクリエイター

2021年5月の記事一覧

透き通った海。

透き通った海。

フィクションですので、お気になさらず。

 昔私は、リストカットをした。

 その時、私は自身の血が透き通っていた事を初めて知った。

 私の血は赤色ではなく透明だった。

 金剛石みたいなヘンな虹色の輝きなんて無くて、ただただ透き通っていた。清水が太陽を含んだ時の純粋さにも似ていた。

 それまで私は、私自身の血の色を知らなかった。

 他の子の前で膝を擦りむいた時、誰か解りたくない人間に殴られ

もっとみる
ストーリィドロップス#1 『染み入る木陰』

ストーリィドロップス#1 『染み入る木陰』

 私が住んでいる場所の近くには公園があって、その公園の中心に大きな樹が生えている。
 彼はいわば公園の主。彼は大きく葉っぱを広げて、「此処は私のものだぞー」って毎日飽きる事なくアピールしているので、偶に私が彼の話を聞きに行ってあげている。

 だって樹の根本の草達はまるで聞く耳を持たず、風に靡いてサワサワしてるだけだし、鳥だって放浪人の名に恥じない適当ぶりで、まるで誰にも相手にされないのは寂しいか

もっとみる