ファッションと年齢。
先日、実家で暮らしている母親と連絡を取っている際に言われたことが胸に刺さった。
「もう何年生きれるかわからないし、服は安いものでいいかなって」
僕は、率直に「そんなことはない」と思った。
僕のファッション好きの由来は、間違いなく祖母と母にあると思う。
二人とも買い物が大好きで、ブランドものを求めしょっちゅう百貨店に行っていた。
祖母は縫製にも興味があり、自分でもよく裁縫をしていた。
僕に学校へ持っていくカバンを作ってくれたりもした。
僕はイケメンでも金持ちでもないし自分に自信もないけど、ハイブランドのショップだけには堂々と入れる。
昔から連れまわされて、良く店に入っていたから。
今でも母はファッションが大好きで、時々雑誌に載っている気になったアイテムを「どう思う?」と僕に送ってくる。
そんな母が「服はもう安いものでいいかな」なんて言うとは。
年齢を重ねたから着れなくなる服もあれば、年齢を重ねたからこそ似合う服もある。僕はそう思っている。
大学生の頃の僕は、今ではとてもじゃないけど着れないような服を着ていた。
黄色やオレンジのパーカーとか、ビビるぐらい起毛した発色の良い古着のシャツとか。
今見ると正直めちゃくちゃダサいけど、僕は大学時代にそういう服を着ていたことは後悔していない。
なぜなら、僕はその年齢で一番好きだった、その年齢でしか着れない服を着ていたからだ。
母はもう60歳を超えている。
でも、だからこそ似合ってくるもの、着れるようになる素敵な洋服があるはずだ。
若いころは派手顔だった母だけど、年齢を重ねて雰囲気が穏やかになってきた。
今なら柔らかい雰囲気の洋服が似合うかもしれないし、若いころは強い感じになり過ぎて着れなかったハードなデザインの服も似合うかもしれない。
振り返ってみると、自分もそうだった。
大学時代の太っていた頃は、自分の持っている雰囲気に合わせてやけに派手な服を着ていた。
社会人になって痩せ、雰囲気が変わった頃はドメブラにハマってモードな感じに方向性を変えた。
30歳になった今では、一周してシンプルに回帰した。
40歳になったらヒゲが似合うようになるかもしれないし、60歳になったら雰囲気のあるジジイになりたいし、80歳になったらジェントルマンでありたい。
年齢を重ねたって、ファッションはいつまでも楽しめるものなのだ。
そんな気持ちを母に伝えようとした矢先。
先月、自称「何年生きれるかわからないし、服は安いものでいい」母はMARNIのバッグを買っていた。多分、絶対5万はする。
僕は不安になった。
実家に蓄えはあるのだろうか?
でも、同時に安心した自分もいる。
母はまだまだファッションを楽しむ気だ。
僕も、まだまだ楽しめる気がする。