個人的には消化不良、他の人の感想を見たくなった「ミナリ」
「ミッドサマー」「mid90s ミッドナインティーズ」と近年話題作連発のA24が送る最新作、「ミナリ」を鑑賞してきました。
本作も、アカデミー賞最有力候補と謳われる作品です。
STORY:
韓国系の移民、ジェイコブは妻のモニカと娘のアン、息子のデヴィッドを連れアメリカの田舎町へと移住。
ジェイコブは農場を経営し成り上がろうとしていたが、モニカは夢のために家族を顧みない夫と距離を感じ始めていた。
心臓に疾患を抱えるデヴィッドのことを案じたモニカは、母・スンジャを韓国から呼び寄せ同居してもらうことに。
スンジャは毒舌なうえ家事も英語もできないため最初はデヴィッドとアンに煙たがられるが、やがて絆を深めて行く。
そんな中、ジェイコブの農場は幾度となくトラブルに苛まれる…
うーん。
個人的にはイマイチだったな、というのが正直な感想。
ただ、全然ダメだったかと言われるとそうでもなく。
おそらく、合う合わないがはっきりある作品なのかなーと。
スンジャとデヴィッドが絆を深めていく過程の描き方や、病弱なデヴィッドが終盤でスンジャのために精一杯走るシーンは良かったと思います。
スンジャの破天荒さもギリギリイヤな感じがしない良い塩梅。僕がこの映画で好きな部分はほとんどスンジャとデヴィッドのシーンだった。
スンジャを演じたユン・ヨジョン、後半のシリアスな展開も含めて見事な演技でした。
あとは、デヴィッドの心臓疾患が農場での生活を経て改善しており、「今の生活を変えない方が良い」と言われるシーン。あそこでのモニカの表情とかはうまかった。
演じたハン・イェリは、調べると結構遅咲きの女優さんなんですね。
ここまで書いたように良いなーと思うところもあるんですけど、自分の中でこの作品がハマらなかった理由って結構明確に見えてるんですよね。
①ジェイコブが農家になりたい理由が不明確
ここがまず感情移入できなかったポイント。
ジェイコブが農家になりたい理由がはっきり提示されていないので、あそこまで家族をないがしろにする行動論理についていけず。
好きに行きたいとか一攫千金を狙えるとかヒヨコの雌雄区別の仕事がイヤだったとか理由は色々描かれてましたが、自分の中では家族と天秤にかけるほどのものではないので、どうも腑に落ちなかった。
②エンタメ感が薄い
僕の中で、映画って絶対的にエンターテインメントなんですよ。
嬉しい楽しいだけある必要はないけど、観ることで感情の高ぶりとか高揚感を感じたいみたいなところはあって。
例えば、2019年の「パラサイト 半地下の家族」は重いテーマ性とエンタメ性が高次元でミックスされている感じがしたんですよね。
その点で言うと、「ミナリ」はテーマ性に重きを置き過ぎて幅広い人を楽しませる域まで到達していないかな、と思いました。
多様性を意識しまくっている今のハリウッドなんかでは非常にウケが良さそうではあるけど。
③家族で協力してる感じがしない
個人的にここが一番大きいところかなと思います。
作中では地下水が枯れたり野菜の納品先から契約を切られたり農場に危機が迫るわけですが、その度頑張るのって基本ジェイコブなわけです。
まあ、農場にこだわっているのが一家の中で彼しかいないので当たり前っちゃ当たり前だけど。
①で述べたように、僕の中では彼が農家を目指すこと自体に合点がいってないので必死で独りよがりやってるようにしか見えなくて。
家族も彼を献身的に支える、っていう感じではないし。
唯一協力している感があったのが終盤の火事のシーンで、あそこは画的にもエモーショナルだなあと思いました。
ああいう感じのシーンが中盤にもう一発あったら印象は違ったのかもしれない。
という風につらつら書いてきましたけど、この作品は結構受け手の繊細さによって印象が変わる作品だと思います。
僕は結構王道エンタメのわかりやすい映画が好きなのでハマらなかっただけで。
多分、演出意図としては火事のシーンに家族が一つになる瞬間を持ってきたかった、っていうのもあると思うんですよ。
それを素晴らしいと捉える感性か、前半からもっと飛ばしてくれよと思うかは観客次第で。
たくさん映画を観て感性が鋭い人には響く作品なのかもしれません。
普段映画レビューを書く前は他の人がレビューを一切見ないようにしてるんですが、この作品に関しては書いてる途中にちょっと見てしまって。
そういう感じ方もあるんだなーと思わせられて非常に楽しかったです。笑
そういう意味で、語りたくなる良い作品なのかもしれません。