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さよならの5分前

恋人と別れる時って、中々気が滅入るものだ。
振る時も、振られる時も。

そんなことを考えながら目の前にあるコーヒーを飲んだけど、全然味が分からない。

ここのコーヒー、結構美味しいはずなんだけどな。前に来たのはいつだっけ。
スマホの写真フォルダを開いて確認すると、もう前に来た時から一年が経過していた。

時の経つ早さと、その頃の写真に写る彼女の笑顔の明るさに驚く。
この頃は、まだこんなに仲が良かったんだ。
こんな笑顔を、見せてくれていたんだ。

幸せな瞬間って、過ぎ去って初めて分かるのかもしれないな。
そんなことを考えながら、写真を見返す。

膨大にある僕と彼女の写真だけど、最近になればなるほど数が減ってきていた。
そして、多分今日からはもう増えることもないと思う。

一緒に撮った写真全部消したら、スマホのメモリはどれだけ空くだろう。
もう容量ギリギリだったので、こうなってかえって良かったのかもしれない。

…ポジティブに考えようにも、さすがに無理があるな。
苦笑いをしてみたつもりだけど、僕は側から見てちゃんと笑えているだろうか。

3年間、一緒にいた。
二人でいることが、当たり前になっていた。
もう冷めているはずなのに、それでもいざ別れを前にすると辛い自分がいて。
彼女の存在の大きさを、改めて感じざるを得なかった。

仕事で落ち込んだ時、祖父が亡くなった時、自分が情けなくなった時。いつも側にいて、励ましてくれた。
いつも、こういうタイミングで良いことばかり思い出してしまうのは良くないクセだと思う。

顔を上げると、見慣れた顔が遠くに見えた。
目が合った瞬間、彼女が寂しそうに笑った気がした。

今日、これから。僕らは別れる。
今、さよならの5分前。

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