君は僕に掴めない星
星は、多分手が届かないから綺麗に見えるんだと思う。
だって、星は近くで見ればただのガスの塊だから。
遠くから見ているからこそ、光り輝いて見えるのだ。
でも、それは星に近い人だけが言えることで。
僕のように近づくこともできない人には、綺麗じゃない部分を知ることさえ許されないんだ。
彼女は、いつでもみんなの中心にいる。
屈託のない笑顔を浮かべ、いつも楽しそうに。
好きになったのは、サークルに入って間も無くの頃だった。
見た目もめちゃくちゃタイプだったけど、何よりその快活な笑顔と人当たりの良さが素敵だと思った。
彼女は、誰にでも分け隔てなく接する。
アニメも見るし、サブカル的な音楽も聴くから趣味の幅が広い。誰にでも会話を合わせることができる。
だから、彼女の周りには自ずと人が集まる。
でも、彼女はそんなことを鼻にかけたりもしない。
本当に充実していて自分に自信がある人はああいう振る舞いができるんだと、僕は彼女を見て学んだ。
僕は、ふざけて君に手を振ることしかできない。
「かわいいー!ファンだわ」なんて言いながら。
お調子者のキャラを作り上げないと、君に話しかけることさえできない。人間としてのランクが違うから。
君は僕のふざけた姿を見て、声を上げて笑う。
そんな表情を見て、僕は情けない自己肯定感を覚える。
彼女を今、一番笑わせているのはきっと僕だ。
他の誰かじゃない。
この気持ちを、僕は友達に話したことがない。
きっと一生話すこともないし、彼女に気持ちを伝えることもないと思う。
周りから見た僕は、人をマジで好きになるようなキャラじゃないのだ。
それに、可愛いのにお高く止まらず控えめで、時にノリの良い彼女は僕には高嶺の花過ぎる。
彼女に恋人ができるか、卒業するか。
この恋を終わらせるのは僕以外の誰かか、時間しかない。
恋が終わるのは2年後かもしれないし、もしかしたら明日かもしれない。
それまでは、彼女を好きでいさせてほしいと願う。
別に何かを欲しがるわけじゃない。友達のままでいいから。
僕は今日も、ふざけながら彼女に手を振る。
手の届かない星に。