編集テンポが気持ち良い青春アニメの傑作「ルックバック」感想
テンポ感に引き込まれてたら、あっという間に観終わってました。
劇場でロングランヒットした「ルックバック」を、アマプラで鑑賞。
めちゃくちゃよく出来た作品で、内容も面白かったです。
無駄を省いた1時間構成が素晴らしい
まず変なオリジナル要素とかを入れず、最高のクオリティで映像化していることが素晴らしいです。
58分の映画を劇場で公開するって、割とリスキーで勇気のいることだと思うんですよ。
同じ2,000円弱を払うならやっぱ2時間の映画観たいし…ってなる人もいると思うんで。
でも、この作品は全てのシーンを過不足なく、完璧なテンポ感でアニメ化している。
全体尺に囚われることなく、原作を愛を持って映像化したことがよく分かります。
クセはあるけどちゃんと理解できる演出
僕、王道好きなんでぶっ飛びすぎた演出があんまり好きじゃないんですよ。笑
前衛的な、とか、攻めた、とか。その範囲に収まってればまだ良いんですけど。
やり過ぎてもう意味が分からない、みたいなやつ、たまにありますよね?笑
「ルックバック」は、その塩梅が絶妙。
時々、『なんだなんだ?』と思わされても最後には『あ、そういうことね』と合点がいく。
冒頭、藤野の描いた漫画が動くところから始まるシーンとかその典型ですよね。
攻めた演出って、本来観客の眼を引くためのものだと思っているんですけど。
攻めすぎると、観客側を置いてけぼりにしてしまうんですよね。
この作品は、観客の眼を引いた上でしっかり物語の根幹に戻る。本来の演出というものがある意味をしっかり果たしている感じがします。
ドラマチックにし過ぎないバランス感覚
この物語、結構展開が激しい上にかなり要素がてんこ盛りなんですよ。
学園モノ、友情、SF、サスペンス。
映画作品へのオマージュ。
終盤の展開は「インターステラー」っぽいし、「バタフライ・エフェクト」や「エレファントマン」要素もある。
まあ、あのシーンは映画へのオマージュというより完全に京アニの事件を意識しまくってますよね。犯人の動機とか、言動とか。
これだけ要素てんこ盛りだと、全編ドラマチックにするとなんかもう疲れちゃう気がするんですよね。
普通に観てても、結構美大襲撃のシーンは重かったですしね。
でも、この作品は結構淡々と進行していくんですよね。あのトーンが良かった。
あの感じが、この作品のドラマチックさとラストの現実感にすごく合っていたと思います。
結局、最後藤野は京本の思いを背負って漫画と向き合い続けるんですよね。
それを後ろ姿で見せるEDなんて、すげえ良いですよ。あのカット以外、この作品をうまく終わらせる画が浮かばないですもんね。
ドラマチックにしない、で言うと主演二人の演技もめっちゃ自然で良かったですね。
二人ともそこに息づいていたというか、アニメの登場人物って言うより実際にいる人っていう感覚があって。この作品の雰囲気にすごくマッチしていたと思います。
全体尺1時間足らずということで勝手に小品だと思い込んでたんですけど、観てみたら完成度の高さに圧倒される本作。
劇場に観にいけなかった方は、是非観てみることをオススメします。