見出し画像

元CM制作職アラサー男による「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」感想

少なからず映像に関わったことのある人間として、これだけは最初に言っておきたい。

この作品に関わったすべての皆様、本当にお疲れ様でした。

2020年いっぱいで活動を休止した嵐。
本作は、20周年記念ライブを映像として残しておきたいというメンバーやスタッフの思いから始まった映像作品。

あくまで「映像で記録する」ことに重点を置き、嵐とスタッフは最初から映像化を前提とした”撮影のためのライブ”を敢行。
観客も、映像に映る可能性があることを前提で参加している。

そのため、通常は観客の視界を妨げないよう配慮されるカメラ位置や演出はすべて映像映えするように変更。
おまけにドローンは飛ぶわ360°カメラは使うわと、最新の撮影技術も投入。

実は、僕が本作で最も驚いたのはカメラマンの数である。
エンドロールを見て本当にゾッとした。

本作の撮影で使用したカメラは、なんと全部で125台。
4Kの映像素材は、1時間大体50GB前後のデータ容量。
カメラによってもちろん多い少ないはあるだろうけど、単純計算50GB×3h×125で18.75TB。実際には、この数値を大幅に上回っているだろう。

この膨大な素材量を管理し、編集したスタッフの皆さんには本当に頭が下がる。
僕も一応映像の業界にいたので、これがいかに大変かはわかる。多分編集作業は地獄だ。


肝心の中身についてですが。
率直に言って「20周年記念ライブを映像で記録する」という狙いに非常に即した内容に仕上がっていたと思います。

メンバーのインタビュー等、ドキュメンタリー要素は一切ない。
全力でパフォーマンスする嵐と彼らを見つめるファン、カメラはそれだけを淡々と捉えていく。
嵐のメンバーだけではなく、観客の表情や嵐から観た客席の様子等も切り取られているのがまさしく”記録映像”感がある。

冒頭、ライブ開始前の世界各国の同時刻映像が流れたことに最初僕は「?」となったんだけど。
この演出も2019年12月23日の”記録映像”だと思えば合点がいった。

嵐といえば仲良し感がありありと伝わるMCの時間も魅力だが、それもバッサリカットしているところにメンバーの「パフォーマンスを記録しておきたい」という強い意志を感じた。
個人的に、それも潔くて良いと思った。MCが観たければほぼフル尺で収録されているBlu-rayを買えば良い訳だし。


楽曲の素晴らしさに関しては、今更言及する必要もないだろう。
1曲目の「感謝カンゲキ雨嵐」から本編ラストの「5×20」に至るまで、名曲のオンパレード。
しかし、それでも僕からしたら「Bittersweet」聴きたかったなぁ…とか「台風ジェネレーション」やって欲しかったなあ…とか思ってしまう。これが彼らの大変なところだろう。
メンバーからしても、ヒット曲があり過ぎてセトリを固めづらいはず。

売れないアーティストから見たら死ぬほど羨ましい悩みだろうけど、ある意味トップに立つ者の宿命とも言えるかもしれない。

個人的に本作の白眉と感じたのは、櫻井のピアノパフォーマンスと共に披露された隠れ名曲「アオゾラペダル」や青春ど真ん中によく聴いていた「サクラ咲ケ」辺り。
この辺は映像を観てインスピレーションが沸いたので、近々単独記事で楽曲レビューを書きたいなあと思います。

序盤に披露された「I'll be there」はあんまり好きな曲じゃなかったんですが、演出でカッコ良く仕上がっててびっくりしました。

終盤、「君のうた」「5×20」のコンボは泣けましたね。
2つとも近年の嵐の楽曲の中でトップクラスに好きです。
泣いてるファンの姿を見て、こっちもグッときちゃいました。

映画を観て思ったのは「嵐の曲って自分の人生と共にあったんだなあ」ということです。
20年以上も第一線にいた彼らは、僕が9歳から31歳まで聴いていた曲を持っていて。
曲を聴くと、当時の思い出が頭をよぎったりして。本当に偉大な存在だなぁと思わされました。

賛否両論となっているアンコール曲カットですが、個人的にはこれで良かったんじゃないかと思います。
確かに「Love so sweet」「happiness」も映像付きで聴きたかったけど、「5×20」で締める方が映画としてはまとまっているんじゃないかな。

しかし、中盤「Believe」で使用されたスローモーション映像だけは全く意図がわからなかったですね。
その他の部分は一貫して“記録映像”というテーマを貫いているだけに、あそこだけは本当に余計だった。

けど、観たらやっぱ「嵐は良いグループだなー」と思わされるのは紛れもない事実。

普段のボケっとした雰囲気とは一変したキレキレのパフォーマンスを見せる大野智。
ピアノ演奏も披露し、常にファンを楽しませようとする櫻井翔。
ファンに向ける視線や笑顔から、きっと彼自身が一番嵐を愛しているんだろうなーと思わせられる相葉雅紀。
何をやっても器用にこなしてしまう天才アイドル、二宮和也。
そして自分を含めた5人の個性を活かし日本のエンタメ界最高のショーを作り上げる男、松本潤。

5人が観客と共に作り上げた2019年12月23日を、限りなく”俯瞰”で観ることができる作品に仕上がっています。

間違いなくファンは楽しめるんじゃないでしょうか。
音響設備に力を入れている映画館で観ることをオススメします。

いいなと思ったら応援しよう!