あの頃僕らはアホだった〜2002年夏・12歳編〜
2002年。
当時中学生だった僕と同級生たちは、日本でも最高峰レベルのアホだったと思う。
毎日、誰かしらが事件を起こしていた。
ただ、うちには不良がいたわけじゃない。
本当に、全員ピュアなアホだったのだ。
遊んでたら勢い余ってモノを壊してしまったり、学校の屋根の上を走り回って怒られたり。
今でも強く覚えているのは、学校の裏にある山で遭難しかけたことだ。
山と言っても、大した高さではない。
せいぜい標高400m程度で、高尾山なんかよりも大分低い。
ただ、低山の方が意外と遭難リスクは高かったりするらしい。登山客が少なかったり、道が舗装されていなかったりするから。
当時の僕らは、全員中二病真っ只中。
舗装された道なんてダセえ、俺たちが道を作るんだ!という気持ちである。
今は上司の言ったことに食い気味で従う僕でさえそうだった。
男子には、絶対に心の中にジャンプ漫画の主人公を飼っている時期があるのだ。
当然、そんな奴らが寄り集まったら正規ルートを進むわけがない。
僕らは、草木が生い茂る険しい道に自ら突入していった。
ちなみに、遊び疲れた放課後に来ていたので全員クソ軽装である。水すら持っていなかった。
というか、9人ぐらいで行ったけど多分2人ぐらいは上履きのままだったと思う。
入山した時点で既に16時頃だった記憶。
道を外れて2時間程。
歩を進めても進めても、全く山頂に辿り着かない。
というか、より深淵に踏み入ってしまっているような感じがした。近づいてる感じがしない。
そのうち、9人のうち何人かのスタミナがない奴、そしてまだまともな神経を持っている奴らが騒ぎ出した。
『これ、俺ら迷ってね?』と。
認めたくはなかったが、実際めちゃくちゃ迷っていたので、僕らは志半ばにして下山することにした。そもそも頭頂できていないけど。
しかし、道に迷っている訳だから下りるのも簡単ではない。
ただ、僕を含めた体力バカ数人はまだまだ動けたので、正直めちゃくちゃ余裕があった。
真夏だったので、18時を回っても陽は高かった。
というわけで、とりあえず体力バカ数人で草木を掻き分け急ぎ気味で山を下り方向に進む。
そうすると、案外あっさりと正規ルートに戻れた。
今考えると運が良かっただけなのだが、当時の僕らはアホだったので『ほら、やっぱ余裕じゃん』と思っていた。
もちろん、この時点で頭頂できなかった事実はとっくに忘れていた。さすが、筋金入りのアホである。
とはいえ、僕らもちゃんと正規ルートに戻れるかは不安だったので大きめの石を置いたり目印をつけながら元の位置に戻った。
『正規の道見つかったよー』
そう言うと、疲れ果てていた友人たちも安堵した。
彼らを励ましながら、再び正規ルートに戻る。
体力がある組も、山を右往左往していたので流石にちょっと疲れてきていた。
なんとか下山し、山の入り口に戻った僕らは口々に叫んだ。
『イェーーーイ!!』
『生き残ったぞー!!』
騒ぎながら、みんなで学校の食堂に戻る。
とりあえず、自販機でジュースを買って乾杯した。
すると、そのうち友人の一人が泣き出した。
『どうした!?』
僕らが慌てて聞くと、彼はこう答えた。
『もう二度とジュース飲めないと思ってた…』
そこまで絶望していたのか。
僕らは、彼がここまで思い詰めているとは思っていなかった。
悪いことしたなぁ。これからは、気を遣って行動するようにしよう。
『お前ら、やっと見つけたぞ』
そう思っていると、食堂に教師達数名が入ってきた。
みんな、怒りに肩を震わせている。
『お前らが山に入っていくのが職員室から見えた。
どれだけ心配したと思っとんねん。
金輪際こんなことはさせん。
今からしばらくは帰らせんからな』
ようやく泣き止んだはずの友達が、また涙ぐみ始めた。
今回はこっちも泣きそうだった。
山から降りれたのに、まだまだ長い一日なりそうだ。
僕は、金輪際放課後は山には登らないと心に決めた。