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すり身があれば頑張れる
水産コーナーのすり身には、常に鶏むね価格でいてほしい。使いやすさと旨味をあんな高水準で両立しているものなんて、他じゃそうそう見ないよ。
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肉を切ることがどんどん嫌になっている。
店でもないのだから切るといっても大した量ではないし、鶏むねなら油を除去する手間も無い。始めてしまえば片付けを含めても10分はかからないだろう。
しかし「嫌」という感情は、そういうお利口な言い分を受け付けない。手がべたべたするし、調理器具を念入りに洗わないといけない。そして致命的なのは、その嫌さ加減を凌駕できるほど鶏むねが好きではないという点。まったくもって気がのらない(正直最近買ってない)。
なので、すり身がセールになると「助かった!」と思う。
スプーンですくえば手は汚れず、洗い物も小さなスプーン1本のみ。ざっくり切った野菜の上にポトンポトンと落し入れ、水、醤油、みりんを回し入れれば私の役目は終わり。下処理をせずとも勝手にふんわりやわらかなすり身団子が出来上がる。
そして何より偉いのが、自身の旨味を煮汁や野菜たちに惜しげもなく与えてくれるところ。私は豆腐でも同じ調理法をしばしばやるのだが、蓋を開けたときに立ち上ってくる匂いや出汁の出具合はさすがに勝てない。調味料を素直に吸収してくれる木綿豆腐も好きなのだけどね。
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醤油を入れすぎたかと思ったが、むしろいつもより良い具合。『薄いかもなあ』とぼんやり思いながら食べるというフェーズが1回もなかった。しかしこの配分を豆腐でやると、それはそれで味がきつくなりそうな気もする。すり身の旨味がマイルドにしてくれたかもしれないから。
作る前に立てていた計画は、1回目に醤油&みりん、2回目は味噌&みりんだった。しかしこの甘じょっぱ煮が気に入りすぎて、アンコールしようかと思い始めている。くたくたになったキャベツの染み具合も素晴らしいし……198円にまで値下がってくれて本当にありがとうという気持ちである。
すり身だけでなく、キャベツも常に優しい価格でいてほしい。というか収入が増えてほしい。
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