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映画「はちどり」キム・ボラ監督

映画「はちどり」2018年/韓国・アメリカ 合作/キム・ボラ監督

 1990年代の韓国を舞台に14歳の少女ウニが家庭や学校生活の狭間で息苦しく暮らす日々を描いている。韓国だけではないと思うが、父という立場から家族への数々の支配的な重圧であったり、兄や姉などがいるならば、男性である兄が与える妹たちとの力関係であったり。家庭のなかにまで社会の通念が地続きになって沁み込んでいる様を克明に描いている。こういったものを描くという行為をフェミニズムという手垢にまみれた一つの言葉で表したいとも思えない。ただ、描かなければこの映画は成立しないし、男性優位的な社会的事実は現代においても姿形を変えて今でも社会に存在しているのだから、この映画が私たちに大いに迫り響いてくるのだと言える。
 現実や社会が混沌とすればするほど、主人公のウニが透明で瑞々しく立ち昇ってくる。儚くて危うい誠実さを誇ってくる。ウニの行動や思想は、残酷なほどに真摯に現実と向き合う。かつてのあなた、私のなかにもそうあったように。
 中盤、物語は緩やかにうねりだす。漢文教室の教師ヨンジとの出会いだ。ウニとヨンジは互いの存在から化学反応がおこされるのだが、物語最後のヨンジの結末は物語にとって本当にこれでよかったのかと私は悔しくなった。沸々したものが残った。
 本映画においての優れている点としては、社会のなかでの14歳の少女の瑞々しくも閉鎖的な現状をあるゆる場面から描いていることだと言える。最もリアリティを覚えたシーンを最後に記したい。入院を余儀なくするシーンの少女の様子だ。14歳の女の子が、いわゆる“おばさん“たちに囲まれながら相部屋で過ごすのだが、ウニの健気な振る舞いや、おばさんたちの世話焼き的なものであったり、短い入院期間であったから生まれる通りすがりの存在である互いへの愛情が何とも言えず心に残った。

筆者/ 北島
絵/ 花堂達之助

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