ある密かな恋②
↑前編(ある密かな恋①)はこちら↑
近いのに限りなく遠く思え
触れたり、長時間話すことさえ叶うことはなかった。
一言あいさつを交わすだけで、すべての世界の幸せを手にしているように思えた。
その時間があっという間に過ぎたあとも、からだ全体がぽかぽかしている感覚になった。
何かに熱くなるとか、熱中するとかいうけれど、あのときの感覚を再現できるのであれば、何を引き換えにしてもいいとさえ思える。
世界がめちゃくちゃになろうが、あのときの姿に、あのときの感覚で会えさえすれば、それでいいと思うことさえある。
僕たちはあまりにも交わらなかった。
小学校3年生から6年生まで僕たちは同じクラスだった。
小学校を卒業して、同じ中学校に僕たちは進んだ。
同じクラスになって欲しい。そう願ったが中学校3年間全てでその密かな願いは叶うことがなかった。
唯一の接点と言えば、陸上部で一緒に練習をしたことだった。
本当に政治が腐敗し、日本という国がおかしくなっている現在。
もし死ねばあのころにタイムスリップすることが、約束されるならば、死ぬのも幸せになるな。
とふと気持ちがふらつくことがある。
年は経ち、肉体もうつろいゆくけれど、一度でいいから。夢でいいからそんな体験をしたいなと思うことがある。
どうしてこんなメルヘンチックなことを書くのか。
突拍子もないことだが、もしも近い将来日本が滅びることがあれば。または自分が生死にかかわる状況に陥ったら…
そんなことをふと考えることがある。
もしそうなったときに、辛いことに対して立ち向かう、戦うことも必要なのだろう。
しかし、こうした自分の胸に埋まっている甘美なマボロシのようなことにもう一度触れて、寿命を終えたいなということも思うのである。
この傾きつつある国がいつまで続くのだろう。この肉体はいつか朽ち果てて、手放すのだろうが。
もう一度あの感覚と再会したい。五感だけでなく、第六感、第七感などの全てで味わい尽くしたいと。
そんな欲求をふとした時に強く感じる。
あのときの光をまとっている姿に、笑顔、声、におい、感覚。手にできないだろうか。
今の現実世界が、そこからあまりにかけ離れており、そこへ行く道筋さえも全く見えないことが本当になぜなのだろうと。もどかしさをつよく感じることがあるのだ。
(↓続編はこちら↓)