見出し画像

四万十川ウルトラマラソン完走体験記⑦

(→⑥から)
50㎞を超えた。引き続き淡々と走っていく。

目先の目的地としては、54㎞付近にある半家沈下橋。
その先の峠を無事に超えたい。目先の少し走ればたどり着ける場所をイメージして走っていく。
ほぼ3㎞ごとにエイドが設置されているのも、マイルストーン、定期的なリズムとなり本当にありがたい。

しばらく走ると左手にJR予土線のコンクリート擁壁が見え、その横を沿うように走る。

2010年にはここから歩きと走りを繰り返しだした地点である。

これまでより通過時刻が早いからか、擁壁の影が走路に伸び、走りやすい。
「こんなに走りやすかったっけ。」

これまでは通過時刻が遅かったからか、日が照り氣持ちが萎えた記憶しかない。

「早く到達するとこういうメリットも有るのか。」
そんなことを思いながら、走る。

ペースは未だ落ちない。50㎞ポストを過ぎて、1㎞6分台で刻めることは想定外だった。
練習は、本番1㎞7分15秒程度で走ることを想定してやっていた。
明らかに想定より速いのだ。

後半の疲労に繋がらないか心配になりつつ、リズム的には良いし、そんなに疲労感も無いので
そのままこのペースで押していこうと思った。

林道に入る。正午過ぎの林道は涼しくてありがたい。
しばらく勾配を上がっていく。
50㎞以上走ってきて、少し軽い勾配でも「ややきついな」と感じ始める。

いきなり目の前の景色が開ける。
エイドと、コース名勝の一つである半家沈下橋にやってきた。

晴天の半家沈下橋は絶景だ。多くのランナーが足を停めて写真を撮る。
私も水分補給と、撮影で立ち止まる。
川から吹いてくる風が氣持ちいい。
一瞬、レース中であることを忘れそうになる。


半家沈下橋をわたる


しかし我に帰る。
このすぐ先にある、峠越えがきついのだ。

前に進み始める。

約2㎞で100m近くを登る傾斜。
そこから一気に下るルートになっている。

想定よりオーバーペースで来ていることもある。
ここを駆け上ると脚が最後まで持たないリスクがある。
休憩も兼ねて、戦略的に歩いて登ることにする。

歩いたとして1㎞9分~10分。
急な勾配なので走る場合とそんなに差は出ない。
頑張って走っても自分の場合、1㎞8分台にはなってしまうだろう。
大勢に影響は無い。

2㎞分フルで歩いたとしても、数分の休憩を取ってから走るのと同じことだ。
近くのランナーと少し言葉を交わしながら淡々と歩く。

そうこうして峠の頂上に到達する。
同区間のラップは1㎞9分後半、10分半となった。
これも事前のシミュレーション通りである。

シミュレーションではこの区間は1㎞13分程度に落ちる想定をしていた。

頂上からは一気に下っていく。
この下りは、20㎞地点に存在する堂が森の600mの下りよりも遥かにきつい。
コースの中での傾斜としては最もきついように思える。

55㎞余りを走ってきた後の、この下りは要警戒だ。
2010年の初出場時には、ボロボロになった膝・脚がこの下り坂でとどめをさせられた。
56.5㎞の第2関門でリタイアをした。

そんなことを思い起こす。

「相当ここは膝にダメージが来るよなあ。」
そう思い、感じながら1㎞7分台でゆっくりと下る。

下り坂でありながら、あまりに急傾斜の箇所は敢えて歩く。
「80㎞までは脚を残さなければいけない。」
足し算では無く、自分の残る体力、体の耐久力から引き算で考える。


60km付近のラップ

下り終わった56.5㎞地点には第2関門と、エイドが待ち構える。
第2関門の閉鎖は13:54
この関門は12:15頃に通過する。

あと3㎞ほど進めば、区切りとなる60㎞ポスト。
その少し先の61.4㎞には第3関門であり、レスト(休憩)地点であるカヌー館。

ガーミン(GPS時計)と実際の距離には1㎞ほどの誤差が生じてきている。
例えば、59㎞ポスト付近で自身の時計で表示される距離は「60㎞」

言い方を変えれば、自分の時計の示す距離の方が、レースで使用される距離の一歩先を示している。
「時計が示すその距離まで進めたら、少し頑張ればレースで表記される距離の場所までは進んでいける。」
と誤差を逆手に考え、モチベーションに変える。

少し疲れが出だすが、さほどペースは落とさずに60㎞ポスト、61.4㎞地点のカヌー館に到達する。
午前5時半のスタート地点から、7時間20分余り。
12時50分ごろの到着。
スタート地点から運んでもらっている、荷物を受け取る。

本当にレストでの中高生のボランティアの方の働きには頭が下がる。
見ていて氣持ちが良いくらい、テキパキと動く。
こんな若者ばかりなら、日本の未来は明るいだろう。そう思う。

第3関門の閉鎖は14:23

1時間半あまり余裕がある状態である。
つかの間の休みを取るランナーも多く、ほっこりとした光景が広がる。

「ここから先が本当の勝負や」そう思う。
ここまではこれまでの100㎞の部の参加3回の内、2回来ることが出来た。
あと40㎞が本当のしんどさを味わうのだ。

荷物の中に入れていた、後半用のウェアを取り出し着替える。

脚中心に冷却スプレーを振りかける。
これまでの60㎞の道のりで積もった疲れを少しでも軽減させるため、丹念に行う。

補食、水分補給。サプリなどの補充。
チェックリストを確認するかのように丁寧に行う。

気付いたら15分ほどが経過している。
準備、ケアなどで予定より時間を要してしまっているが「まあいいだろう。」
と考える。
ここまでの展開では、想定よりだいぶ攻めている。

何より、ここから失速したら意味が無いのだ。休憩も戦略の一つである。
念入りにケアをした後、13時10分ごろレストから出発することになる。
(→続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?