【短編小説】嘘をついてもいい日なら
春の日の、目の奥にちらちらとした刺激を与えてくる夕日に向かって歩いている。大通りから横道に入って歩道のない住宅街の中の道まで来たけど、あたしの家はまだ遠い。
あたしの隣、少し前をカレが歩いている。あたしよりずっと背の低いカレは小学生くらいの背格好の男の子で、あたしの通っていた小学校の制服とは違う真っ黒の姿。ランドセルを背負っていたりはしない。そんな小さなカレだけど、いつも少し前ここの場所であたしを先導して歩いてくれる。だからあたしはカレの顔を一度も見たことがない。もしか