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台湾食べある記 ⑤台北・淡水
ホテルの朝食バイキングには夢がある。
しかし、こと台湾においては夢ばかり追いかけないほうがいい場合もある。
台湾は朝食も外食文化が強いため、台湾らしい朝食を楽しみたい場合はホテルを出て、ローカルの食堂に飛び込むのも一興なのである。
今朝はホテルから10分ほどの位置にある朝食を提供する食堂を訪れた。
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元々別の場所にある本店の2号店としてオープンしたという店は、比較的最近オープンしたようで清潔な店内であった。
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そんな店内でいただいたのが、台湾の伝統的な朝食、鹹豆漿だ。
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豆乳に酢を加えてやや固形化したところを食べるもので、油條(揚げ麩)やネギなどがトッピングされている。
豆乳らしい優しい味わいながら、しっかりとだしの風味も利いた味わいで5日目の疲れた体に染み渡る。
その他卵焼き的なものと肉団子入りパイ的なものも食べ、しっかりと朝の活力を漲らせてから行動を開始した。
本来であれば今日は帰国日のはずであった。
しかし飛行機の欠航により突如として2日間の延長戦が与えられることになったため、まずは高いところに登って落ち着いてみることにした。
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台北101は高さ509.2mを誇る台湾最大の建築物で、2004年の完成時には世界一の超高層建築でもあった台北のランドマーク的な建物である。
101階建ての内部はショッピングモールやオフィス街になっており、その上部には展望台も設けられ、台北の街を一望できる。
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高級ブランド店が並ぶエリアを抜けて、展望台のエレベータへ。
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エレベータの時速は60kmを誇りあっという間に地上400m近い展望フロアへとたどり着く。
そこから見下ろす大都会・台北は、自分が異次元のような高さにいることを教えてくれる。
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ランドマークに登るのはいい。
その街を一望すると、街を把握できたような心持になることができる。
3度目の台北にしてようやく、その全容を目の当たりにすることができた気がした時間となった。
そうしているうち、本当ならば飛行機に乗り込み、帰国しているはずの時間となった。ここからはいよいよ延長ラウンドである。
思いがけず得られた2日間をどのように活用しようか。
思い切って台北を大きく離れて台中・台南といった地方の大都市を訪れることも少し考えたが、台北近郊を攻めることにした。
ひとまず追加で手配したホテルに向かう。
そして、想定外の滞在に対応すべくコインランドリーへ。
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何枚かコインが無駄に飲み込まれたが、無事洗濯することができた。
そして一路北へと向かう。
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地下鉄の淡水信義線に乗って終点まで約40分。たどり着いたのが北の街・淡水である。
台北川の河口に位置する淡水は港町として栄え、イギリス領事館がおかれるなど、異国の影響も受けた歴史のある街になっている。
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駅を降りるとすぐに水辺の公園になっている。
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朝の動き出しが遅かったこともあり、時刻は既に夕刻に迫っていた。
夕日が美しいことで有名だという河口の先へと向かうことにした。
河口へはフェリーが出ているはずだったのだが、すでに運航は終了しており、やむなくバスで向かうことにする。
バスを待つ間、淡水の名物だというドリンク・酸梅湯をいただく。
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スモークした梅で作られるジュースとのことで、梅の甘酸っぱさとスモーキーフレーバーが合わさった独特の味わいだ。
きっと好みが別れる味だと思うが、この時期の水分補給や観光で疲れた体へのクエン酸補給という意味では最適な飲み物かもしれない。
バスで15分ほど揺られると、漁人碼頭と呼ばれる公園エリアにたどり着く。
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情人橋と呼ばれる橋からの夕日が台北一ともいわれる名所になっているそうだ。向かってみることにした。
橋へ向かって歩みを進めよう。
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橋は夕日を眺めようとする観光客でにぎわっていた。
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会場に沈もうとする夕陽そのものは見えないが、赤く染まった空と海が美しい。
橋から眺める夕日もいいが、個人的には橋越しの夕日のほうが、より映えて見えた。
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また、後ろを振り返ると多くのヨットが停泊し、その向こうには豪華そうなホテルも見える。
きっとリゾート地的な扱いなのだろう。
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ガイドブックなどでは淡水をしばしば「台湾のベネチア」と称している。訪問前「きっとそれは言いすぎだろう」と思いながら淡水へと向かった。
実際に淡水を訪れて、「台湾のベネチア」かといわれるとやはり「それは言い過ぎだ」と思う。というより、タイプとしてベネチアと似ていない。
ベネチアのようなところ、と思っていくのではなく台湾らしい港町なのだ、と思って訪れたほうが、この街本来の魅力や美しさをバイアスなく受け止めることができるような気がする。
再び来た道を戻っていると、噴水ショーのようなものが始まったので見物する。
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なお、ドローンショーのようなものも行われていたが、いかんせん台数が少なく、何を表現しているのかは謎であった。
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ショーが終わるころにはすっかり暗くなっていた。
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そろそろ夕食の時間である。
意外なほどこの埠頭エリアには飲食店が少ない。
数少ないレストランをみつけ、夕食とすることにした。
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この店も店頭の生け簀から食材を選んで調理法を指定するスタイルであった。
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牡蠣や白身魚などを選んで注文し、着席する。
しばらくして、ふと不安になった。
予想外の滞在延長となったため、現金の持ち合わせがほとんどなかった。
カードを使えればよいのだが、台湾は意外とカードを使えない店舗が多い。
確認してみると、カードは使えないという。
やむを得ず、近くのATMへ行くことにした。ATMの場所を尋ねる。
するとおばちゃんは「こっちへ来い」と店の外に私を連れ出した。
場所を教えてくれるのか、と思っていると、外のテラス席にいた男性と何かを話し始めた。
すると男性はそばのバイクにまたがりエンジンをかけた。
何が起こっているのだろうか。
理解が追い付かない私におばちゃんが中国語で説明をしてくれる。
どうやら歩いていくには若干遠いから、バイクで乗せていってくれる、ということらしい。
こうして、おじさんと私の淡水夜のドライブが始まった。
後ろを振り返ると店員が爆笑していた。
なんだろうこの展開は。
私も笑っていた。
連れてきてもらったのは、先ほど埠頭から眺めた高級ホテルだった。
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中へ入りATMを探す。ようやく見つけて現金を入手すると、待ってくれていたバイクに再度またがりレストランへ。
10分間のアクティビティは幕を閉じた。
戻るとほどなく料理が運ばれてきた。
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蒸し牡蠣に安定の空心菜炒め。
そして大鍋にこれでもかと作られた魚の味噌汁に甘酢かけ。
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港町淡水らしい、魚介尽くしのディナーとなった。
おろしたての現金で支払いを終えると大満足で店を後にした。
店を去る前、もしあのドライバーおじさんがいたら写真を撮りたかった。
しかし上がりだったのだろうか。おじさんはもうどこにもいなかった。
本日のマグネット
本日のマグネットがこちら。
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台湾型のマグネットに描かれているのは港町淡水らしい水辺と橋だ。
下部にある謎の丼はローカルフードの阿給のようだ。
中に春雨の入った油揚げで、その名は日本語の油揚げに由来するそうだ。
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こうして美しい夕日と魚を堪能すると、再び台北への帰路に就いた。
本当ならば体験できなかったはずの景色に味にバイクの風だ。
こういうのが旅行の醍醐味かもしれない。
あと2日はどういう予期せぬ出会いが待っているだろうか。
旅はまだ終わらない。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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