真昼の歯ブラシ救出劇(in排水溝)
題名を見て嫌な予感がしたそこのあなた、ごきげんよう。
このたびキッチンの排水溝に落ちた歯ブラシを無事救出したので、同じようなことでお困りの方の参考になればと戦いの記録を残しておく。お困りでない方にもあれです、普通に消耗したのでちょっと話を聞いてほしい。
排水溝や取れたゴミなどの写真はないので、そういったバッチィものをご覧になりたくない方も安心してご高覧くださいませ。
なお、こちとら今まさに歯ブラシを落として困ってんだ! 経緯や失敗例なんて読んでる暇ねーぜ! という方は、下の目次から「④真打、パイプクリーナー」をクリックされたし。
■事前準備
①前住人に憤る
それはある休日の朝のことだった。外は良い天気で、お掃除日和。
引っ越してきてしばらく経ったし、今日はキッチンの排水溝も念入りに掃除しよう。ゴミ受けを外し、排水トラップの蓋を開けてのぞき込むと……
なんかある。
白っぽくて細長いものが、排水管の中に引っかかっているのが見える。
そう、まさに私が今そこを掃除しようと右手で握りしめているアイテムによく似た細さ、形状の……。
え、私歯ブラシ落とした??
いや、そんなはずない。だってこの家でここを掃除をするのは、今日が初めてだもの(それはそれでどうかと思う)。ということは前に住んでいた人が落として、そのまま知らんぷりで引っ越しちゃったってこと?
実はその直前にお風呂の排水トラップを掃除しようとしたところ、弁を取り外した瞬間ペットボトルのキャップが飛び出てきて「!!??」となったばかりなのだった。前の住人はアレか、排水溝という排水溝に何かしらを詰め込むのが趣味だったのか。別に人の趣味を否定する気はないけれど、遊んだ後の始末はご自分でなさいな。
ぷりぷりしながら割り箸を突っこんで取り出そうとするも、思ったより深い場所に落ちているようで届かない。しかもよく観察すると、排水管が直角に曲がっているところに、ブラシ部分がちょうど引っかかってしまっているように見える。えー……。
②現実逃避に失敗する
ちょっと現実を受け入れがたくなってしまったので、とりあえず他の場所の掃除を済ませ、紅茶を淹れてソファに座った。
あの歯ブラシがいつからあそこにあるのかわからないけれど、排水管の曲がり加減や太さを考慮するに、これ以上奥へ行ってしまうことはなさそうだ。今まで支障はなかったわけだし、私もこのまま知らんぷりしてしまって問題ないのでは……? と、内なる声がささやく。
半分その気になりつつ、ちなみに放置した場合どのようなリスクが……と検索してみる。
水道業者の営業トークも入っているのかもしれないけれど、たどり着いたWEBページには「排水管の破裂」や「水漏れ」など、恐ろしい末路が並んでいた。ひぃ。
こちとら筋金入りの小心者である。ひとたびこれらの事実を認識してしまった以上、キッチンで水を流すたび「ああ、この先には歯ブラシが……破裂が……」という恐怖がよぎるに違いない。いやだよ、そんな爆弾抱えて生活していくの。
管理会社に連絡したらなんとかしてくれないかしら。……いや、待って。「前の住民が歯ブラシを落としたみたいで」なんて言ったら、絶対私が落としたのを言い訳してると思われる。本当なのに!
でもこのまま知らんぷりして、もし住んでいる最中にこれが原因でトラブルが起きたらそれこそ私の責任だよなあ。で、処理が大変なだけじゃなくてたぶん勤務先にも連絡行くよね(私は今、会社が借りてくれた物件に住んでいる)。人事部に「寮の排水管を破裂させた奴」だと思われるの、すごくいやだなあ……。
落ち着こうとしたはずなのに、逆に不安が増幅してしまった。現実逃避に向いていない。
■実践
うまく現実から逃れられなかったので、いろいろなWEB記事やYouTubeで得た知識を武器に、やれるだけのことをやってみることにする。
①菜箸にガムテ→×
まずは一番手ごろなものを。菜箸にガムテープを、粘着面を外にして巻き付け、目標をくっつけて引き上げようとするも、うまくいかず。
手ごたえはあるものの、やっぱり奥の方で引っかかっているようで引き上げるには至らない。もう少し素直な落ち方(?)をしてくれていたらこれで取れたかも。
あと、私の細工の仕方がイマイチで、途中でガムテープが菜箸から外れそうになる瞬間があり肝が冷えた。ゴミを排水溝に追加投入してしまうことになったら逆効果なので、試される方はご注意ください。
②水糸を絡ませる→×
水道業者のHPで見つけた、「水糸」というものを水といっしょに流して落としたものを絡めとるやり方。水糸というものを知らなかったのだけれど、建築現場等で水平な線を取るために使われる、丈夫な糸のことらしい。Amazonにて100円足らずで売られていたので、他の生活用品のついでに買ってみた。
で、実際にやってみたところ、私のやり方が悪いのか全然歯ブラシを捕まえてくれず。ゆるく巻き付いているような気配はあるのだけれど、いざ糸を引き上げるとするっと抜けてしまうので諦めた。何かコツとかあるのかしら。
水糸、まだたくさん残ってるんだけどどうしよう。プラスチック製と思しき太い糸なので、裁縫とかには使えないしな……。古紙を縛るには細すぎるし。
もしよんどころない事情で水平を取りたい人に行き会うことがあれば、お譲りすることにしよう。
③配管解体を試みる→×
YouTubeだと、シンク下の配管を自力でばらしてしまって落ちたものを救出する動画も多かったので、一応流しの下を覗いてみた。
……連結部らしき部品の検討はつくけれど、それを外しただけでどうにかなるとはとうてい思えない作り。我が家の配管は見つけた動画のどれとも構造がちがっていて、素人では元に戻せる自信がなかったので却下とする。
動画と同じような構造なら、比較的簡単に解体できるのかも。でもこれ、あくまで自己責任の世界なのよね。できればあんまりやりたくないな。
④真打、パイプクリーナー
短い現実逃避タイムを挟んで、再びAmazonへ舞い戻る。Twitterやブログ等で複数の人が「これで取れた」と証言していた、パイプクリーナーなるものを探しに行くのである。
細いチューブの片端に鉤爪がついており、反対側のスプリングを操作するとそれが伸縮して獲物をキャッチしてくれる仕組みのツールだ。細くてぐねぐね動くマジックハンドという感じ。700円くらい。
他人のミスの尻ぬぐいに700円払うのか……とやや癪に障るも、これで水漏れなんてことになったら700円どころでは済まないので致し方ない。私の焦りを察してくれたのか、ただでさえ配送の速いAmazon氏がかつてないスピードで届けてくれた(感謝)。
ちなみに楽天では同じものが400円弱だったので、発送日等の条件が合えば普通にこっちでいいと思う。ホームセンターとかにも売ってそう。
私の場合、一刻も早く不安から解放されたかったのでAmazonに頼りました。
早速使ってみたところ、ちゃんと取れた!! 排水管の中は暗く、狙いをつけて操作することはできなかったものの、適当にチューブを突っ込んで鉤爪をぐっぱぐっぱさせたら捕まってくれた。ブラシ側が管の曲がり角に引っかかってしまっていたので、せっかくブツを捉えてもするっと抜けたりしないかが心配だったけれど、問題なし。細い爪なのに、掴む力はかなり強いみたいだ。
というわけでお困りの方、これお勧めです。今後自分でもものを落とさないとも限らないので、お守り代わりに保管しておこうと思う。
で、引き上げてみてぞっとしたこと。落ちてたの、歯ブラシだけじゃなかった。
上げた歯ブラシの先の部分には、ビニールの切れ端らしき大きなゴミが絡まっていたのである。たぶん、ガムテで取ろうとしたときはこれが邪魔をしていたんだと思う。思えば奥に流れず、歯ブラシに引っかかっていてくれてよかった……。
ただ、通常時の排水口には、円柱型のカバーがかかっている。その上にはさらにゴミ受けがあるので、普通はこんなもの落ちようがないと思うんだけどな。謎すぎる。
正直歯ブラシなら細いし、詰まりを起こすような可能性は低いかもしれないと思っていた。けれど、絡まったビニールとそれに付着した汚れを合わせると結構な大きさだったので、あのままにしていたらそのうち水が流れなくなってしまっていたかも。放置しなくて本当に良かった、とホッとしたのでした。
■振り返り
ということで気づいた日の翌々日に救出成功、というようなスケジュールでした。長かった。この2日ほどはずーっと頭のどこかで「歯ブラシ…………」と思っていたので、そこから解放された開放感がすごい。
それにしてもこういう不測の事態が起こったとき、インターネットは本当に心強いな。ありがとうYouTube、ありがとうTwitter、ありがとう見知らぬ人のブログ。
私は普段あまりお役立ち系の文章を書いていないのだけれど、インターネットのある社会に生活していてよかった、という感謝を込めて、今回の記事を書きました。いつか誰かの役に立てるとうれしい。