【短歌十首】秋の夜長に
夕餉後の居間で各々読み耽る母は楽譜を我はサガンを
無防備に「掻いて」と君が向けた背にバカって書いたのスキの代わりに
ググるよりアナログ時計で数えたしシカゴの友の今の時刻を
何事か成せとせっつく虫の音よ何も成さぬもまた人の道
芋の香の菓子を食ひつつ米と芋しか食へぬ未来憂ふ記事読む
センチメンタル気取りたき夜はマサムネの声に揺られて遠い目をする
スピッツは秋のにほひを醸しをり春の歌でも夏の歌でも
一滴で押し流せぬか世の憂ひ ものもらひに点すこの一滴で
舞茸も毒ありと知る舞茸の加熱の弱くトイレ籠りて
縁遠き我の詠みたる恋の歌いつのことぞと蟋蟀笑ふ
※第五首の「米と芋しか食へぬ未来憂ふ記事」とは、こちら。
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