【詩】終末時計
空に大きなアナログ時計が浮かんでいる
あれは、人間の終末時計だ
人間以外のあらゆる動物たちには
終末時計が見えている
人間以外の動物たちは
それぞれの生を営みながら
終末時計の秒針が進むのを切望している
というよりも
空に浮かぶ終末時計が、生の営みの一部なのだ
人間以外の動物たちは
秒針が一秒進むたび
それぞれの仕方で歓喜し
秒針が一秒戻るたび
それぞれの仕方で落胆する
人間は
自分たちの種族を”賢い人”と名づけるほど愚かなので
土を汚し
海を汚し
森を汚し
空を汚し
そうして散々汚した挙げ句
自分たちの愚かさにようやく気づき
慌てふためいて策を講じるのだが
その策でもって、また新たな害を引き起こす
人間が滅びれば
それに伴って
いっときは大きな犠牲を払うことになろうが
長い長い時間をかけて
世界中がバランスを取り戻すだろう
人間が滅びても
食うものと食われるものがいて
日々の生命の危機は止むことがないが
長い長い目で見れば
世界中のバランスは保たれるだろう
地を這い
土に潜り
草を食み
木を上り
海を跳びはね
求愛のダンスを踊り
花々を飛び交い
捕食者を欺き
潮の流れに乗り
巣を組み立て
仲間に敵を知らせ
沼地で眠り
岩の上で体をあたため
獲物を追って走り抜け
海草に卵を産み付け
そうしながら
人間以外のすべての動物たちは
終末時計が12時の鐘を打つ瞬間を待っている
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