ダイエットの基礎知識【11】空腹感を大切にする
今回は前回の記事の続きです。
前回は空腹感とは何かということについて考えてきました。
空腹感には血糖値が自然に下がってきて起こる正常な空腹感と、血糖値とは関係なく起こる偽物の空腹感、それから血糖値の乱高下から起こる異常な空腹感の3つがあるということを見てきました。
今回は、そうした空腹感とどのように向き合ったらいいかということについて ちょっと考えてみたいと思います。
ん?でも「空腹感と向き合う」っていったい何??
どういう意味なの?
と思った方もいると思います。
そこで、結論だけ先に言っておきましょう。
「空腹感と向き合う」というのは、
「空腹感をポジティブに受け止めて大切にする」ということです。
空腹感にポジティブもネガティブもあったもんじゃなくない?
単なる生理現象じゃない?
という人はたぶんダイエットしなくてもいいか、けっこう簡単に食べる量を調整できるタイプの人なんじゃないかなと思います。
体重が超過しがちな人の中には、実は空腹感とネガティブな感情を結び付けている人がけっこういます。
たとえば、
「お腹がすいた」=「辛い」「嫌だ」「苦しい」
「お腹がすいた」=「寒い」「落ち込む」「気持ちがへこむ」
「お腹が空いた」=「寂しい」「悲しい」「切ない」
これは例にすぎないし、見やすさの都合3行に分けていますが、この分け方に大きな意味があるわけではありません。
でも、はっきりとした言葉になるわけではありませんが、これらに類する何かネガティブな気持ちと空腹感がなんとなく結びついている人がいるようです。
たとえば、私の夫。
夜遅くなってきて私が「お腹がすいた」と言ったとします。
すると、こんな言葉が返ってきます。
「可哀そうに。何か食べたら?」
「何か食べたら?」はわかるのですが、「可哀そうに」とは何なのでしょうか。
食後3~4時間が経過してお腹がすいてきたら「可哀そう」なんでしょうか?
たとえば、夜が更けてきてそろそろ寝る時間になったタイミングで、
「眠くなってきた。もうこんな時間なんだ。」
と言ったとしましょう。
「じゃ、寝たらいいじゃん?」
と言うことはあると思いますが、このときに「可哀そう」はつけますか?
あんまり、つけないと思いますね。
寝る時間が近づいてきて眠たくなるのは、ある意味で当然のこと。
自然な生理現象であり、それを周りの人に知らせているだけのことです。
もちろん、やならければならない仕事が終わってなくて徹夜しているとか、何時間も集中して勉強していてそれが一区切りしたときに「眠くなってきた」という場合には、「頑張りすぎてて可哀そう」とは言えるかもしれない。
同じように、忙しすぎて昼食や夕食を抜いてしまって6時間以上何も食べていないときに「お腹がすいた」なら、「可哀そう」とは言えるかもしれない。
でも、普段のシチュエーションでお腹がすいて「可哀そう」といえるような事態ってなかなかないんじゃないでしょうか。
とすると、考えられるのは「お腹がすく」こと自体に「何か可哀そう」と思わせる別の捉え方がありそうです。
結局、夫に直接「何が可哀想なの?」ときいたりはしなかったのですが、「お腹がすく」=「可哀そうな状態にある」となんとなく夫が思っていることがうかがえました。
そして、もし空腹感に対してネガティブな感情を持っている場合には、食事制限はとてもとても難しく苦痛なものになると言えるでしょう。
そもそも「食べ過ぎる」ということ自体が、その空腹感によるネガティブな感情を打ち消そうという反応から起きているのかもしれません。
少しでもお腹がすくと、自覚できないような暗い感情が想起されて、それを打ち消すために、何でもいいから食べようとする。
そして気が付いたら食べ過ぎていて、体重が増える。痩せられない。
そういうことがもしかしたらあるのかもしれません。
さて、改めて空腹感について考えてみましょう。
☆空腹感はいいものだ
空腹感のお話をするにあたって、まず空腹感がすごく大切なものであるという考え方をダイエット中の人は持ってほしいと思います。
「空腹は最高のスパイス」という言葉があるように、私たちは空腹感を感じることで食べ物をより美味しく感じることができます。
これは裏を返せば 「お腹がいっぱいの状態だとどんなに美味しい食べ物でも美味しいとは感じられない」ということでもあります。
私がメルマガを購読しているストレスニュートリションのナターシャ・スタルヒンという方が書いていたことに、
「ギャル曽根さんは満腹感を感じることができない体ではないか」
というのがありました。
ギャル曽根さんというのは、日本のテレビ番組で大食いやフードファイターがとても流行したときに、最も人気が高かった大食いのタレントさんです。
彼女は大食いするようには見えないようなスリムな体形で、いつもテレビで美味しそうに5㎏、10㎏あるご飯をどんどん食べていました。
どんなに食べてもいつでも「美味しー☆」と言いながら嬉しそうに完食する彼女の様子は見ていてとても気持ちがよく、お茶の間でも人気が出たのではないかと思います。
ものすごく有名&人気になった結果、彼女に関して「大食いが可能な秘密」が番組の企画として取り上げられたり、インタビューなどで掘り下げられたりしました。
そこで実際に彼女は「『満腹』という状態がよくわからない。普段の生活では食費は1000円/1日くらいに抑えて過ごしている」という話を私は読みました。
そうです、ギャル曽根さんは本当に満腹感、つまり「お腹がいっぱい」という状態がわからない人だったのです。
何をどれだけ食べても「満腹」にはならいので、ちょっとだけ食べたときも、山盛り食べたときも、食後の気持ちに大きな違いが無いのです。
とすると、普段から大量に食べるのは経済的ではないので、普段の生活では食費として使っていいお金の金額で食べる分量を決めているということなのでしょう。
大食いやフードファイトをしている人の中には本当にこういう「満腹感」がないタイプの人がいるようで、どんなにたくさん食べ物を食べても「満腹」にはならないために、普段の生活では「量より質」を優先した食事をする人も多いようです。
もちろん、普通に満腹感を感じるタイプの人でフードファイトをやる人もいます。
その人たちは自分の食べられる上限をいかに引き上げるか、上限に到達する時間をいかに遅くするかなどの面で戦略を立てていかないと「満腹感」がない人たちとやりあうのは難しいということになりそうです。
空腹感の話をしていたのに、満腹感の話になってしまいました。
でも、この話で一番重要なのは「空腹感」があることで美味しい食べ物を「美味しいー☆」と食べることができるということです。
もしいつでもお腹がいっぱいだったり、たとえば胃腸が悪くて胃もたれや胸焼けなどで「お腹がすいた」と感じることができない不健康な体であったら、どんなに味が素晴らしく美味しかったとしても、ご飯やおやつを美味しく食べることは難しいということです。
「空腹感」を感じるというのは、体が健康であるということの証であり、とても幸せなことでもあるということです。
☆空腹感を否定せずに認めよう
「お腹がすいた」と感じる空腹感は、自然な生理現象です。
よくハイカロリーなものを食べることに「罪悪感」を感じたり、低カロリーなものに「ギルティフリー」と書いてあったりして、「食べること」や「カロリーをとること」が「とても悪いこと」のように感じることがあるかもしれません。
なので、自分を食べたい気持ちにさせる空腹感を知らず知らずのうちに憎んでいる人もいるかもしれません。
「お腹がすかなければ、食べなくてすむのにな・・・」
そんな風に、空腹感を「いらない子」扱いしてしまっていませんか?
でも、先に書いたように、空腹感は健康の証であり、食べ物を美味しく食べるためになくてはならない存在です。
なので、空腹感は「あって当たり前」と受け止めましょう。
そして、体重がオーバーしがちな人の中には、空腹感を感じると一刻も早くそれを解消しようとして食べ物を口に入れてしまうという人がいると思います。
それもやめましょう。
せっかくなので「空腹感を楽しみ」ましょう。
空腹感はネガティブな感情と切り離して扱いましょう。
空腹感自体は、とてもよいものです。
もし生き物のお腹がすかなかったら、気が付かないうちに飢えて死んでしまうことだってあるかもしれません。
「お腹がすくって素敵だな」
「お腹がすくって健康的だな」
「お腹がすいたら、このあとのご飯がきっととても美味しいな」
「お腹がすく」=「ごはんが美味しくなる」
と考えて、わくわくした気持ちでご飯の時間を待ちわびながら過ごすようにしましょう。
ちょっとお腹がすいたからと、手近なおやつを食べて空腹感を解消してしまうのは、実はとてももったいないです!
お腹がすくと感じる、悲しさとか、寂しさとか、なんか寒いような、物足りないような、暗くなる気分は「それは気のせい」です。
そう思わせる因子、たとえば過去の記憶とか、砂糖中毒みたいになっているとかは実際にあるかもしれませんが、とりあえず空腹感自体は決して悪い物ではないので、急いで打ち消したり否定したり、適当な食べ物を口に入れてそれをごまかすのはやめましょう。
お腹がすいたら、健康な自分の身体・胃腸に感謝して、次に食べるご飯に感謝してご飯までの時間を楽しく過ごすように心がけましょう。
そして、6時間以上胃が空にならないように気をつけましょう。
よく言われる「食べていない時間が長く続くと体が飢餓モードになって太りやすくなる」という現象に注意する必要があります。一般的には8時間以上何も食べないでいると、なりやすいと考えられています。
食事と食事の間は目安で4時間程度あけるようにし、一方で8時間以上はあけないようにしましょう。
いわゆるファスティング、断食を自己流でやると実際に飢餓モードになりやすくなると思いますし、「正常な空腹感」も損なわれますし、何より「空腹感を楽しむ」余裕が消滅してしまいます。
食べない時間が長すぎて、空腹感ではなく「飢餓感」を感じてしまったら、「食べない時間を楽しく過ごす」ことはほとんど無理になってしまうでしょう。
食べないでいることが苦痛にならないうちに、毎日決まった時間に定期的に健康的な食事をとることを心掛けて余裕を持ったダイエットができるようにしたいですね。
今日はここまでです。
空腹感について、特に空腹感に結びつく感情と空腹感を感じたときの対処法にフォーカスして書いてみました。
お役に立てれば幸いです。
読んでくださってありがとうございました。
自然に、豊かな気持ちで痩せられますように!