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お前ってネギが似合う女だな。
お鍋の材料を買った帰り道、突然そう言われた。
大学時代なんか遊ぶこと、しゃべること、
つまりサークルに夢中で、
しょっちゅう終電ぎりぎりの毎日だった。
(あ、ちゃんと4年で卒業したよ)
夜、友達と鍋でもしようぜということになり、
食材探しに京都の町に繰り出す。
24時間空いているスーパーがあり、
煌々とあかりがついていた。
白菜、ニンジン、長ネギ、白滝、あマロニーもいるやん…なんて選び、袋に詰めた。
5人くらいだったから、仲良く割り勘して、
袋はちょっと野郎がいいとこ見せて重い分は
持ってくれて。(決して持たせたわけではない)
ほーんとたわいないことを話しながら寒空を
歩いたもんだ。
後ろを歩いていた友達が急に、
「ほんとゆずってネギ似合うよな」
「どういう意味!?」
つまり、所帯じみてるということだろうか。
女子に対して失礼では。
いやここはポジティブに考え、
家庭的ということにしておこう。
確かに私はその時、白ネギがスーパーの袋から
はみ出していた。
それとも鴨がネギしょって現れた的な?
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「いやいやいや、いい意味で」
余計、わからんやん。
そんなポケモンいなかったっけ。
何をしてもおかしくて楽しくて。
関西の大学生はとにかくたこ焼きパーティーに
いきがちなんだけど、
冬はやっぱり鍋だ。
闇鍋と称して、電気を消してお鍋の中に
肉まんを入れたり濡れおかきを入れたりしてた。
(全部食べた)
あの頃はもうかすかな思い出にしかならない。
友達と話しても「よく覚えてるな!」
「そんなこと言ったっけ?」とかになる。
わたしはそういう断片的な長期記憶が得意なのだ。
ネギが似合うと言われようが、
あの蒸気の中でみんなとつついた鍋は忘れられない。
数年後、あの時の男友達とつきあったりもしたけど
結局うまくいかなかった。
断じてネギのせいではない。
彼には、わたしという鴨がネギしょって現れたんだろうか。なんて。
今だに長ネギを買うたびにこの話を思い出す。
しみじみとした味わいにもならない、
男っ気のなかったわたしらしい話である。
今日もお付き合いいただきありがとうございました。
ほこほこした鍋がおいしい季節になりましたねえ。
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