![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/95198483/rectangle_large_type_2_0001cac908992166ed45db61459cf446.jpg?width=1200)
赤福とお福ちゃん。
ゆみこは、大変お怒りでござった。
ゆみことは、ワタシの母の名前(仮)である。
ゆみこ(仮)は、東海地方へ旅に出かけた父へ
大好物の生和菓子を土産に
買ってくるよう頼んでいた。
そう、誰もが知る、
お伊勢さんの名物「赤福」である。
気難しい……もとい、こだわりが強い
ゆみこ(仮)は、どんな贈り物をしても
99.9%喜ばない。
まるで、禁止区域でタバコを吸ったあげく
ポイ捨てをし、吸殻を靴でぐりぐり
するが如く、人の心を踏みにじるのが
大の得意なのである。
(……と、ワタシは思っていたが、
投影だったらイヤだなと思う今日この頃)
が。
その話は置いておく。
まぁ、とにかく
家族が、親戚が、ご近所さんが、友人が
贈ってくれたものに対して
必ず文句を言う。
必ずだ。
だが、そんなゆみこ(仮)にも
例外が一つだけあった。
それが「赤福」である。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/95198870/picture_pc_fda264f8d5a1f930cdab0ea8a15ed0b7.png?width=1200)
ソレを前にすると、相好を崩し
夜の9時以降は、「何も食べない」という
鉄の掟をあっさり破り、
美味しいお茶を淹れてペロリとたいらげて
しまうほど、大好きなのだ。
なのに。なのに。なのに。
父は、帰りの車内で、"うっかり"お腹を空かしてしまった。
手元には、「赤福」。
父、土産の赤福食べちゃったんだってよー!
代わりに父が連れて帰って来たのは
類似品の「おふくちゃん」(仮)だった……。
和菓子へのこだわりのない父と
赤福……もとい、父の帰りを
今か今かと待ちわびていたゆみこ(仮)は
怒りの放火をひらめかし
怒髪天、衝(つ)きまくり。
ワタシと言えば、日頃から
母、ゆみこ(仮)との小競り合いが
絶えなかったため
そんな二人のやりとりを
内心ブレイクダンスでも
踊っちゃいたいほどの歓喜でもって
傍観していた。
(悪いヤツだよ自覚あるよ)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/95198624/picture_pc_fdd1a5d4a07c4610f720db8ea09a167c.png?width=1200)
以来、父は、「赤福」の名を
しっかりと胸に刻み、
決して途中で食べることもなく、
「おふくちゃん」に浮気することもなく、
本日、何百回目かの旅から帰宅し
無事、ゆみこ(仮)の好物を持ち帰った。
ゆみこ(仮)は、湯を沸かしお茶を入れ
満面の笑みで
餡子がたっぷり乗った餅を
頬張っている。
時刻は、夜の9時47分であった。
平和な夜である。
いつも、スキやフォローをありがとうございます。
写真も使っていただき、感謝感激です!
花小麦
(photo by 花小麦)