本当に厚ければ速いのか

 久しぶりに書こうと思います。今回はWAが発表した競技会時に着用するシューズに対する新規定について僕が思ったことです。

長距離界を席巻した厚底シューズ

 まず新たなルールが作られた理由としてはナイキさんが開発した厚底のカーボンプレート内蔵のランニングシューズによって好記録が多発したことがあげられます。マラソンの日本記録もこのシューズを着用した大迫傑選手が樹立しました。

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 このようにトップ選手のほとんどが着用しています。

(写真:sankei.com)

 しかし今回のWAの新規則をよく見ると、規制がかかるのは800m以上のトラック種目が主なのです。ロードレースに厳しいルールは適用されません。たしかに5000mや10000mなどのトラック種目の記録向上にも厚底シューズは一役買ったのかもしれません。ですが海外のトップ選手を見るとトラック種目ではスパイクを着用しています。これは実は日本でもいえることでマラソンの日本記録こそ更新されましたがトラック種目の日本記録は厚底シューズを着用した選手によっては更新されていません。そしてさらに先日男子10000mの世界記録が更新されましたが、その選手が着用していたのもスパイクでした。以上から、僕個人としてはトラック長距離種目でのシューズの新規制には疑問を感じています。

そもそも厚ければいいのか

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 これはソフトバンクさんのcmの一部分を切り取ったものです。僕はこのcmを初めて見たときに衝撃を受けました。この高速シューズなるものはスプリングが搭載され、かなりの厚底であることがわかります。今までの発想であればバネによって推進力を増大させるというだけで以下のようなデザインでよかったはずです。(写真:ameblo)

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しかしこのcmで出てくる高速シューズのデザインはどうも最近の厚底シューズを意識しているとしか思えません。僕がこのcmで何が衝撃だったかというと「靴底が厚ければ速く走れる」という誤った考えが広がりかねないということです。数秒のシーンにすぎませんし、ソフトバンクさんにそんな意図がないことはわかっていますが危ないなと思いました。余談ではありますが、意外と厚底シューズの認知は広がっていて、1年前ほどからは長距離をやっていると話すと「じゃああの厚底のやつ持ってるのか?」と言われることが多々あります。。。(写真:at.webry.info)

 本題に戻るとただ靴底が厚ければ速く走れるなんてそんな簡単な話ではありません。だってそれならブーツとかのほうがいいじゃないですか。。。つまり厚さという指標だけで規制をかけることが間違っていると僕は思います。

 先日asicsさんが、WA新規定で一度許可されたシューズの数種類が規定に違反すると再発表しました。正直、見た目的に厚さ制限はオーバーしているだろうとは思っていました。しかしここで忘れてはいけないのが厚ければ良いというわけではないということです。厚さだけで線引きをすると使用できなくなるのは話題の厚底カーボンシューズだけではありません。クッション性が重視されたランニング初心者向けのものや練習モデルで設計された耐久性の高いものにも規制がかかってしまいます。これはトラックレースの門戸を狭めることにつながりかねないと思います。初心者や中学生はケガを予防するために薄底のレーシングモデルのシューズを着用しない人も少なくありません。実際僕も中学生の頃は3000mのレースには新規定で制限されるシューズで(asicsさん ターサージール)出場していました。さらに一部で話題になったのが、フィールド種目にもこのルールが適用され、投擲種目で使用できないシューズが出てきているというものです。これらの事態はおかしいと僕は考えます。そしてこのままではWAが「厚底で速く走れます。」と言っているようなものです。

 今回の新規定に関しては様々な問題がすでに世界中で起こっています。今まで使用していたシューズが使えなくなり、大会直前に新しくシューズを購入しなければならなくなった選手や、大丈夫だと思って購入したシューズが使用できなくなるということも僕の周りで発生しています。今回の問題の発端となったナイキさんのシューズのキャッチコピーが「厚さより速いものはない」でした。果たして本当にそうなのか冷静な判断が必要だと思います。

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