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#441 「プレゼンはプレゼント」思考の欠如。育成社員成果報告会で感じた違和感

昨日、社内の育成社員成果報告会に参加してきました。

これは私が勤務する会社でおそらく30年以上前から続いてきたイベントです。
新卒2年目社員終了までを育成期間と定義していて、入社2年間が終わろうとしているこれくらいの時期に、それまで取り組んできたことを他部署含めて10分弱のプレゼンテーションとしてまとめ、別部署の部長や社員がフィードバックする、という営みです。

私は、自分のチームに新卒で入社してから一緒に仕事をしているメンバーの発表の場であったため、応援も兼ねて出席していました。
彼女の発表を作る上では、これまで半年近く資料のストーリーを作るところから一緒に取り組んできたものです。おそらく他の発表者のプレゼンも先輩社員や管理職の上司がアドバイスしながら作られたものだと思います。

他の2年目社員の発表を見ていても、みなさんそれぞれの現場で奮闘しながら業務に取り組んでいることは伝わってきます。ただ、何となく同じようなストーリーばかりで、発表の聞き手のことをどこまで考えて作られたのかな?というのが分からない発表が正直多かったです。これは、発表者が云々というよりも、発表内容を指導する側・発表会の運営側の意識として「プレゼンはプレゼントである」という思考がガッポリ抜け落ちてしまっているのではないか?と感じています。

私の社内だけではなくて、きっと多くの職場や何らかのプレゼンの場で発生していることではないか?と思うので、何らかの発表をする・指導する機会がある方向けにヒントになる話があるはずです!


似たようなプレゼンが多かった

業務都合上、私は全ての発表が聞けたわけではないのですが、昨日は全部で7人くらいの発表者がいて、4人の発表を聞いてきました。
皆さん、プレゼンテーションのスライドは綺麗にまとめられていて、発表も堂々たるもの、新入社員で配属されてから2年間弱、それぞれの現場で奮闘しながら、一人称で仕事に取り組んできたということはよく分かる発表でした。

一方で、どの発表もいわゆる「課題設定」と「ストーリー構成」が本当にそれで良いのかな?と感じるところがありました。

私が新入社員の時にも、自分も経験しているのでよく分かるのですが、とにかく型にはめたストーリー構成にしがちなんですよね。私自身が発表者であった2010年代前半では、「QCストーリーでまとめなさい」というのが明確に発表内容の作成の仕方で指示されていました。

QCとは、Quality Controlの略で、品質管理のことです。QC活動とは、職場単位で品質を管理し、改善に取り組む活動。元々は製造業における品質管理手法でしたが、開発・営業・間接・サービスなどの非製造業にも普及した考え方です。

引用:コンサルソーシング株式会社 HPより
https://www.consultsourcing.jp/5084

で、「QC 7つ道具」という品質管理のためのメソッドがありまして、その中でも個人的によく見るのが、「パレート図」や「特性要因図」です。

引用:総務省統計局「なるほど統計学園」
https://www.stat.go.jp/naruhodo/9_graph/jyokyu/pareto.html

私が育成社員だった10年以上前には、これらを用いることがスタンダードでした。当時2年目社員だった私は、「スティーブ・ジョブズ 脅威のプレゼン」を読んでいたこともあり、ごちゃごちゃスライドに書いても聞き手は興味を持って聞いてくれないだろうと思っていました。

だから、何も文字を書かずに絵だけのスライドや、一文だけ真ん中に書いてあるスライドを使って発表を試みたのですが、「QCストーリーこそ正義」の文化に全く合わず、部署内発表練習会の時に、当時の管理職集団からけちょんけちょんにされた記憶があります。笑

さすがにそれから時が経って、いまの発表要領には、「QCストーリーを無理に使う必要はない」「上手くまとめようとすることよりも、他人が聞いてわかりやすい発表を心がけること」みたいな内容になっていました。
そのため、私のメンバーへの発表資料作成の際には、上手くストーリーにまとめる必要はないから、とにかく「課題設定が全て」何を課題と捉えて、2年間自分がどう向き合ってきたのか、に集中してコンテンツを作ろう、と話をしていました。

しかし、当日他の方の発表を聞いていると、ガチガチのQCストーリーではないものの、例えば「○○工程の作業で○○営業日分の遅延が見込まれることになったから、これを解消すべく○○ツールを作って業務効率化し、無事に遅延を解消できた」みたいな発表ばかりだったんですね。

まぁ、これはこれで大事なんだけど、「本当に課題設定すべきところはそこなのか?」と感じるわけです。そして、ストーリーは綺麗で論理的ではあるのだけれど、次のスライドはどんな展開が待っているんだろう?というワクワク感がありません
これは、発表資料を作った育成社員の方がどうこうというより、教える側の人間、あるいはこの報告会はこうあるべし、という根強い文化が残っていること自体に、個人的には危機感を覚えました。

自分のチームメンバーは「仕事の遅延解消とかが本質的な課題ではないはずだから、2年間プロジェクトを見てきて、本当に課題だと思うことを自分の言葉で話してほしい」と伝えていました。結果、彼女は「若手社員へのノウハウ継承」をテーマにしました。

手前味噌にはなりますが、講評者の方からも「よくある話でなくて、本質的な課題に向き合っていて内容が面白かった。私の現場でも考えていきたい」というフィードバックをもらっていました。

「プレゼンはプレゼント」思考の著しい欠如

発表全体で感じたのは、「自分たちはこういうことをやってきて、これが今後の課題です!」で終わるプレゼンが非常に多いということです。
これを1人10分の発表が7人続くので、それぞれ対象としているテーマは違えど「遅延解消を効率化して無事に間に合わせた」の趣旨の話をひたすら聞くことになるのですね。
これ、自分が聞き手の立場になると絶対感じると思うのですが、なかなかの苦行だと思いませんか?

私が見た発表へのフィードバック、というわけではなく、このような発表を聞いた後のごく自然な感想として「で、何なの?」となってしまうと思うんですよね。

そうではなくて、「私たちは2年間現場で仕事を覚えてきて、こういう仕事のやり方や風土に課題があると感じた。だから、こういう取り組みをやってみたら、それがこのように改善された。これを他の部署でも応用できるはずだから、こうしてみてはどうか?」の提言としてまとめるようなやり方にした方が、聞き手にとっても聴き甲斐があるのではないかと思います。

発表資料を作る育成社員の方にとっても、プレゼンストーリーの型にはめて、綺麗な発表を作る、ではなく、より主体的なメッセージを伝える場となった方がやり甲斐あるんじゃないかな?と。

第三者に伝わるためのストーリーはもちろん大事ですよ。でも、資料を綺麗に作るとか、流暢に話すことよりも、「その人なりに捉えた課題は何か、それに向き合って自分なりに得た気付きを他人に持ち帰ってもらうこと」の方がよっぽど大事です。

その人なりの行動や想いが発表にのって、聞き手の協力を得る、巻き込む、何らかのインスピレーションを与えて、その人の行動を変えることが本質的な目的のはずです。

プレゼントだからね。聞き手が喜んでくれるか?の発想が最も先に来て、その人に伝わって、何らか行動をしたい!と思ってもらうためにストーリーを考える、という順番だよなと。

今後も、後輩のプレゼン指導のような場はこれからも多くあると思いますが、改めてこのあたりが大事なんだよ!という価値観を普及させていきたいと感じるエピソードでした。

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林 裕也@IT企業管理職 ×「情報×探究」
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