#351 IT業界のB2B企業が、マーケティング4.0への移行に必要なアクションとは?
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
今日は、フィリップ・コトラーのマーケティング理論に則り、私が属するIT業界のB2B企業にとって、今後より必要となるアクションプランについて、考えてみたいと思います。
マーケティング4.0とは?
マーケティング理論が特に面白いところは、この100年以内の中でも市場トレンドの変化に伴い、理論そのものが変わってきていることです。マーケティング1.0から4.0への推移について、私なりの理解をざっくりまとめると次のような感じです。
日本の場合、特に戦前〜戦後のモノ不足の時期には、供給を需要が大きく上回っていましたから、マーケティング1.0の時代であったと言えるでしょう。
モノの供給量が追いつかないから、とにかく沢山仕入れて、加工して、広告で認知してもらうことが重要視されていた時代。供給側の視点で良いものを作ればモノが売れる時代でした。
その後、1955年頃から高度経済成長期を迎え、高度成長のペースが落ち着いてくる1970年頃には、モノ不足の状況が終わり、より顧客のニーズを的確に把握して、顧客が求めるものを作れる企業が台頭するマーケティング2.0の時代に入りました。ここでは、プロダクトアウトではなくマーケットインのアプローチに変わり、企業はペルソナやプロトタイプなどの顧客のニーズを知るためのアクションにシフトしてきました。
そして、1990年代、インターネットの時代を迎え、成熟期を迎えてくると、人間の先進的な満足度や企業イメージ・ブランド向上に比重が置かれるマーケティング3.0の時代に入っていきます。モノが欲しいというよりも、自分の納得感や、大切な人との時間の共有に重点が置かれ、消費活動においても、製品の機能性よりもデザインや、共感、愛着といったより精神的な価値が重視されるようになりました。
2010年代、スマホの爆発的な普及でSNS市場が活発になり、他人からの承認欲求を満たしたり、自己実現欲求を満たしてくれるコトに消費傾向がシフトするマーケティング4.0の時代を迎えています。
他人からいいね!と言ってもらえることに喜びを感じて、他人に言いたい!と思えるような貴重な体験、仲間との一体感が感じられるサービスが選ばれるようになっています。
様々なコミュニティが出来てきたのもその一環だと思いますし、このnoteもある種の承認欲求を満たしてくれるサービスなのだと捉えています。
B2B企業にとってのハードルは、マーケティング3.0
ここまで見てきてお気付きの通り、マーケティング2.0までと、マーケティング3.0以降には大きな違いがあることが分かります。
それは、マーケティング3.0以降では、より個人の消費行動に主眼が置かれているため、B2Cビジネスでは親和性が高いものの、B2B企業には、何をしたら良いのかイマイチピンと来ない点です。
多くの企業がマーケティング2.0あたりで止まっているようですが、その主要因の一つはB2Cへのアプローチに対する突破口を見つけられていない企業が多いからではないか?と考えています。
もちろん、企業活動として世の中からNo!を突きつけられないように、多くの企業が環境貢献活動や持続的な事業活動に関してアピールし、特にグローバル大企業にとっては、ESG投資を呼び込むための活動を進めているように感じます。
一方で、事業内容の本丸のところに、なかなかB2Cを中心に置いたマーケティング3.0以降のトレンドに対応するためのアクションを持って来れていないB2B企業が大半ではないでしょうか。
だからこそ、多くの企業がこぞって「顧客体験・CX・カスタマーサクセス・生活者視点」などのキーワードを掲げて、その突破口を探っています。既に出来ていることであれば、あえてそこを強調しなくて良いですからね。
B2Bビジネスに従事してきた私としても、これまでB2Bでやってきた企業が、真の意味で「CX重視」、「生活者視点」のサービスを事業の中心に置けるかというと、なかなかハードルが高いことは身に沁みて分かります。
それは、求められる組織能力や組織内のあらゆるプロセスが、「生活者視点」のサービス開発とは別物だからです。
そのため、マッキンゼーやBCGのようなグローバル大手コンサルティングファームも、「顧客体験」に関する企業向けのレポートやコンサルティングサービスを充実させているのだと思います。
IT業界のB2B企業が、どのように3.0以降に対応するか
では、私が従事してきたIT業界のB2B企業が、マーケティング3.0以降のトレンドにいかに対応していくべきか、踏み込んで考えていきたいと思います。
まず、B2B企業が、より「人間中心」のサービスにシフトしていくためには、自分たちが自前で生活者視点・顧客体験重視のサービスを提供するケイパビリティを獲得するか、B2C企業で既にマーケティング3.0、4.0のトレンドの取り込みが出来ている企業と協業するか、の二択の方向性になると考えています。
しかし、これまでB2Bだけをやってきた企業がそんなに簡単に新しいケイパビリティを獲得できるとは到底思えず、経営者自らがリーダーシップを発揮して進めるような動きがあるのであればまだしも、そうでないのであれば、一時的に一部だけで盛り上がるのが関の山かなと。
だから、現実的にB2Cの感覚を得てビジネスモデルを変えていくためには、「B2B2C」型でスモールスタートの実績を作るほかなく、いかに前半のB2BのところでB2C企業と上手くコラボレーションできるか、が鍵になってきます。
だから、B2B企業にとってより必要な動きは、実際のプロジェクトベースで一緒にToCマーケットで協業できるB2C企業を探し、ToCビジネスの肌感覚を持つことではないかなと。
B2C企業は、既存のToCマーケットの顧客が望む「驚き体験」を追求しますが、Wow!な体験に繋がるアイデアをいきなり出すのは至難の業。だからこそ、色々試してみることが必要ですが、一定量のトライをするためには、1チャレンジあたりのサイクルをいかに早めていけるかが肝になってきます。
そんな時、一緒に取り組んでいるB2B企業がそのスピード感に対応できないのでは苦しいので、それまでの製品開発の考え方を完全にアップデートする必要があります。
例えば、ソフトウェア開発におけるウォーターフォールの考え方は、最初に作るものを定義する「要件定義」という工程からスタートしますが、これからどういうサービスを作るか、という時に、イチイチ「まずは要件定義を・・・」なんて言っていては、全く成り立ちません。
「要件定義」をいう言葉を禁止するくらいの覚悟が必要ですが、それまで要件に応じたシステムをきちんと作り上げることに重きが置かれていたシステムインテグレーションの仕事とは、真逆の発想です。
しかし、B2C企業と一緒にエンドユーザーの体験価値向上に繋がるアイデアが出てきた時に、例えばこんな感じですかね?とその場で絵を書いてみせたり、簡易な動くものを1週間以内には作って持ってくる、くらいのスピード感を持たないと、いつまでもマーケティング2.0から先のトレンドには対応できないままです。
企業としては、そういうケイパビリティを獲得するためのプロジェクトに投資する必要があるし、個人レベルの仕事の仕方でも「持ち帰ります」ではなく「その場でアウトプットを作って見せる」動き方が当たり前、という価値観を組織の中に作っていくのが肝要です。
幸い、マーケティング4.0に応じた対応が出来ている企業は多くありませんから、「アウトプットイメージを作るまでの爆速スピードアップ」だけでも、B2B2CビジネスにおけるB2B企業の価値向上に繋がるアクションになると考えます。
まとめると、IT業界のB2B企業がマーケティング3.0以降のトレンドに対応していくには、マーケティング4.0による価値提供を目指すB2C企業との協業して、エンドユーザーの価値創造を目的とするプロジェクトの数を増やす、そのために必要な「その場で動くもの、目的感の絵を示す能力の向上」により力を入れていくのが重要。B2B企業の個人のスキルアップの方向性も、「その場で結論を出す。動くものを見せる。最終イメージを共有する」ところを目指していくべし、と考えます。
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