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#350 育休や保育に関するモヤモヤ。寛容性が高い社会には程遠い現実

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

先日、春野さとみさんの記事を拝見して、男性スタッフが職場に三ヶ月間の育休取得を申し入れたところ、断られたという話をされていました。
また、別のスタッフも一年以上の育休取得の希望を伝えたところ、「忙しいから一年以内に復帰して」と言われて従ったとのこと。

私の職場では、男性も育休を希望通り取れていて、先日社内で別の部署の人たちとの意見交換をする機会がありましたが、男性も希望に応じて半年や1年間などしっかり育休を取れる環境です。
社内でも実際に育休を取った男性社員が、実際に育児生活はどうだったのか?をウェビナーで発信する機会があったりして、男女関わらず育休を取れるような雰囲気が醸成されつつあるのを感じます。

私は、社員数が海外を含めると10万人を超える企業に勤めているので、こういう大企業の動きは非常に重要だと考えています。働き方も「ハイブリッドワーク」が導入されていて、社員自身が「リモートベース・ハイブリッド」や「オフィスベース・ハイブリッド」を選択できるようになっています。

先日、「時短勤務を促すための給付」の方向性を示している政府のスタンスは逆で、むしろ「時短勤務を廃止して、時間基準で給与を決めない方向性に進むべき」との意見を述べていますが、夫婦共働き世帯・核家族化が当たり前になった現代にあった働き方や制度運用をベースとした大企業によるプロモーションは、社会全体の価値観や空気感を変えていくために重要な一歩だと考えています。

冒頭の春野さとみさんの記事で指摘されている「制度はあるけど、現場の雰囲気が変わらない問題」も、「そんなもの」「仕方ない」と考えていては、変わるものも変わりません。

実際に、個人の働き方も、私が入社した2010年代と現在ではかなり変わってきているのを実感しているように、育児や保育に関する社会全体の寛容でない雰囲気も、必ず変わっていくと信じています。特に、子育て関連の政策も先10年でさらにアップデートされていくでしょうし、個人としても「おかしい」とか「これまで我慢してきた」みたいな話は、ちゃんと発信していかないといけない。

春野さとみさんが「それはおかしい」と公言されているように、私も「まだまだ子育て世帯に優しい社会」なんて言えないよね、と感じているポイントについて、指摘していきたいと思います。


「育児休暇」という言葉の違和感

春野さんの記事のコメントで、おだわらさんが「育児休暇」という言葉が嫌、とおっしゃっているのですが、これは本当に共感です。

以前、澤円さんが、文科省が定義している「いじめ」という言葉は、実態の酷さに対して「ひらがな三文字」が軽く見えすぎるため早々に禁止用語にして、具体的な犯罪名だけを使うようにしてはどうか?という指摘をされていました。

これも本当にその通りだと思っていて、それくらい名前が与える印象って重要だから、かなり繊細に気を配る必要があります。

「育児休暇」や「介護休暇」がどのような議論を経て決定した言葉かは知りませんが、何となく制度設計側のスタンスが見え隠れしている気がしてなりません。

「休暇」というと、英語で"Vacation"になってしまいますからね。実際、育児休暇は英語で"Childcare leave"ですし、「暇」という漢字が入るのは違和感があります。

厚労省のサイトによると、以下の通り「育児休業」と「育児目的休暇」という言葉をあえて使い分けているのですが、「育児目的休暇=育児・介護休業法第24条により、育児に関する目的で利用できる休暇制度(いわゆる配偶者出産休暇や子の行事参加のための休暇など)を設けることが会社の努力義務」とされています。

https://jsite.mhlw.go.jp/okayama-roudoukyoku/content/contents/syuseiji2019-1.pdf

いやいや、育児に関する目的で利用できる休暇って何だ?て思うんです。
育児は休暇じゃないぞ、むしろ仕事より全然大変。それくらい、子育てって壮大な高難度プロジェクトだから、仕事より大変な育児のために、仕事をしないことを休暇と呼ぶことに矛盾を感じます。

特に、子供が0歳の時には、昼夜問わず3時間起きにミルク飲ませてオムツ替えて・・の繰り返し、子どももすぐに寝ずに泣き叫び続けますから、こちらの疲労もストレスも半端ないですよね。うちの場合は、1歳になったところで、保育園に通い出して風邪を頻繁に行くようになり、「今日は大丈夫かな」と思って保育園に送り出して出社した数時間後に発熱でお迎え要請が来ることも頻繁にありました。2歳になったらイヤイヤ期が始まり、朝保育園に行かせるだけでも一苦労。玄関でゴロゴロ転がり泣き叫ぶ子どもを見ながら、会社の始業の時間を気にしてイライラしながら無理やり抱えて送り出した日もあります。

子どもがかわいいのは事実ですが、「子どもがかわいい」の一言に、その裏にある様々な苦労や、親側のストレス・モヤモヤ・後悔・悩み・不安などを一緒くたにして向き合わないのはおかしいです。負の側面についても、それぞれ対峙して扱うべき問題です。

バッファゼロの保育制度

上述した睡眠不足や風邪、イヤイヤ期の話は、子どもの成長過程で必要なことですから仕方ないとして、その周辺にある制度の窮屈さが、夫婦共働き世帯の子育て親に追い打ちをかけるシーンがあるのを感じます。

例えば、時短保育の話。もちろん、基本的な考え方として、仕事をしている時間帯に子どもを見ていてもらう、が保育であることは理解していますが、「労働時間でない時間=保育園に預けられない時間」をあまりに厳密にやりすぎると、子育てする親は、一体いつ一息つけるのかという。

職場では、「時短勤務」と言いながら時間外もやらないと到底終わらない仕事量をアサインされ、「時短保育」の名のもとに、仕事が終わりきっていない中で、子どもを早めの時間に迎えに行き、ご飯・お風呂・寝かしつけの怒涛の時間をこなし、夜中に残った仕事をする。子どもがいくら可愛くても、バッファゼロの子育て期間に対して、ポジティブに感じられない人がいるのも当然だと思います。

実際の労働時間と保育で預けられる時間を厳密に連動させても、心に余裕を持てるはずもない親を増やして、結果的に子どもにも悪影響を及ぼす社会になるだけではないでしょうか。

親のリフレッシュ目的で利用可能な一時保育制度も存在してますが、全ての保育施設で利用できるわけではなく、電車に乗って移動しないと預けられないなどの理由で利用のハードルが高かったりします。

だから、普段日常的に利用する保育園の利用ルールについて、3分の2以上が共働き世帯、通勤時間も往復平均1時間35分(総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」より)である現代の実情に合わせて、せめて子育て親に多少の心の余裕を持たせられる制度にアップデートしていかないと、日本の幸福度ランキングで毎回低い水準にある「寛容性の高い社会」なんて実現できません。

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林 裕也@IT企業管理職の楽しさ発信・デジタル人材育成
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