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#285 固定費に縛られない生き方

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

先日お送りした「分業前提の会社員こそ、全ての活動から切って離せないファイナンスの基礎知識は全員が持っておこう!」シリーズのオマケとなります。
会計とか財務の知識って、自分で会社経営したり、会社の中でも財務や経理を担当しないと、実は受け身では学ぶ機会って少ないのではないでしょうか。

一方で、マネジメントの役割では、当然お金を見る目は求められるし、何らかの役割で責任者の立場に就いたらお金が見れないと苦しくなってくるので、本当は学校で全員が勉強した方がいいテーマだと本気で思っています。

そんな考えから、先日ファイナンスに関してざっくり理解できる書籍と共に、自分の言葉でまとめ直した記事があるので、ご興味ある方は、ぜひこちらもご覧になってください!

今日は、ちょっとまた別の書籍を題材にしまして、会計の概念的なポイントを紹介しながら、自分の家計経営などの考え方にどう適用できると良いのか?について、ご紹介したいと思います。

本日の参考書籍はこちらです。

なんとこの本、1978年発売のものですが、会計書の古典的名書として80万部以上売れているロングセラー商品です。
日常的に会計に携わっている人から見れば、簡単に捉えられる部分も多いかもしれませんが、冒頭に話したような学校教育で全員に「会計の基礎を」みたいなシーンであれば、入口として分かりやすい部分が多いという印象でした。

大学の時に「会計学基礎論」たる授業を1年生で初めて学んだ時は、あまり会計って自分はワクワクしないなと思ったり、その後「日商簿記2級」まで取得して、同じ学部で公認会計士を目指す周囲の友人たちが簿記1級までチャレンジしているのを見て、「自分は2級まででいいや」くらいの距離感で会計と向き合ってきた自分も、改めて言語化することでより理解が深まる部分もありました。

ただ、会計の概念的なポイントだけでなく、自分の生き方への適用として着想した部分も織り交ぜながらご紹介します。


会計とはお風呂のようなもの

損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)と聞くと、帳簿上の数字の羅列という印象を抱く方も多いかもしれませんが、お風呂のようなものであるとまずはザックリ概念として捉えることで、より突っ込みやすくなります。

P/Lはお金のフロー状態を表しますから、ある一定期間の中でどれだけの売上があり、どれだけの費用が出ていったかを示すものですね。お風呂で言うと蛇口からフローインとして入ってきた水が売上、お風呂の線からフローアウトして出て行った水が費用です。

で、売上-費用で残った部分がストック状態を表現するB/Sに載ってくるわけですね。
月々の家計管理の中を例にとって考えると、1ヶ月の収入(=売上)から生活費などで使ったお金(=費用)の残りのお金(=利益)が、その家計のB/Sにストックとして積み上がっていくイメージです。

ただ、後述しますが、B/Sは大きければ大きいほどいい、というわけでもないんですね。お金を銀行口座に沢山寝かしているだけでは人生の幸福感は上がらないように、ストックされたお金が、次の売上を作るのにどれだけ貢献しているか、ということや、どれだけ幸福度を上げるために活躍しているか、という視点が重要です。

損益分岐点(Break Even Point)の捉え方

損益分岐点を表現するよくある図は、次のようなもので、一度は見たことがある方が多いのではないでしょうか。

芦屋会計事務所さんのサイトより引用
https://ashiyakaikei.com/break-even-point/

つまり、まずは固定費がベースにあって、その上に変動費が積み上がっている絵ですね。で、どこかのタイミングで売上高が「固定費+変動費」を上回るポイントが来て、それを損益分岐点と捉える考え方です。

損益分岐点を見るときに使われるCVP分析(Cost, Value, Profit分析)では、製品やサービスを生み出すためにかかる費用とその販売量を元に利益を計算し、損益分岐点がどこかを分析する手法となりますが、単に「収益と費用」を比較して見ていても、戦略は生まれてきません。

戦略を掴むために必要な損益分岐点の見方は、「付加価値=売上高-変動費」と捉えて、「付加価値」と「固定費」の相関関係で押さえるところにあります。
つまり、損益分岐点を単に損益に分かれ目と見るのではなく、固定費を回収し切るために必要な付加価値、と見ることです。

付加価値と固定費の関係を要素分解すると、次のようになります。

「付加価値」=売上高(価格×量)-変動費(変動単価×量)
「利益」=「付加価値」-「固定費」

この「付加価値」が「固定費」を上回った時に「利益」が生まれるわけですから、各要素に対する戦略が見えてくるわけですね。

つまり、「売上高」にアプローチするためには、「価格」に対するアプローチとして「単価を上げる」、「安売りしない」みたいな選択肢が見えてきますし、「量」に対するアプローチとして、「回転率を上げるには」「営業を強化して顧客リーチを伸ばす」みたいな選択肢が見えてきます。
「変動費」に手をつけようと思ったら、変動単価を下げるために材料費を安く調達する、量産型でコスト落とす、みたいな話が出てきます。

そしてもう一つ重要な捉え方が、「売上必要倍率(BEP比率」です。

売上必要倍率=「固定費」÷「付加価値」

売上必要倍率が100%以上であれば、固定費回収のために「あと○○倍を売ることが必要」となりますし、100%未満であれば「安全域Aランクまであと○○%」と理解できます。

事業が継続するためには、当然100%未満であることが重要で(そうでないと赤字)、70%以下で優良企業、60%以下で超優良企業ということになります。
かつてのホンダは50%を目指していたそうですが、これは操業が半分になっても、赤字にならない経営体質作りを目指した、というのと同義です。

固定費から独立する

私が何より重要と考えたのは、「固定費」をギリギリまで無くすための努力です。

なぜならば、「固定費」を回収するまで「量」を売らなくてはならない、となるから、あらゆるビジネスに無理がかかると思うからです。
「月々一定の固定費がかかるのは仕方ないよね」とか「一定の初期投資は必要だよね」と考えてしまいがちなのですが、そもそも「固定費」をどこまでかけるか、最初の意思決定がとても大事。「固定費」というくらいなので、一度投入した費用をすぐに減らす、ということは難しいですから、とにかく「固定費」「初期投資」を極限まで抑えられるか、というのが、特に個人視点で小さな事業を始めたり、生き方を捉える時にも重要だと思うのです。スタートの切り方で勝負がついていることもままあります。

「固定費」が限りなく0に近ければ、初めは小さな「付加価値」でも着実に「利益」になる。「利益」が出ない活動は、どんなに良い取り組みであれど続きませんから、考え方の順番としては「ちゃんと利益が出る仕組みを構築する」が先で、「その取り組みの価値を向上していく」というのが鉄則です。

そして、固定費は有効活用すれば売上に繋がりますから、いかに使いこなせるか、が大切です。
経営者視点では、月々の給料を支払わないといけない人件費も固定費なるわけですが、「従業員に気持ちよく働いてもらってドンドン成果を出してもらう」ための風土や仕組み作りというのは、固定費有効活用そのものとも言えます。

「風通しの良い会社」は、単に従業員にとって働きやすい、という側面だけでなく、社内のコミュニケーションコストを最小化し、固定費を最大活用し、経営視点でも利益貢献に繋がる話であることをよく理解しておくのが大事です。

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林 裕也@IT企業管理職 ×「グローバル・情報・探究」
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