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#282 分業前提の会社員こそ!最低限のファイナンス知識を押さえておこう (1/2)

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

会社の規模にもよりますが、大企業・中小規模の会社に勤めている人であれば、組織がある程度役割に応じて分割されていて、その中の一つの役割を担う、という形態を取られているところが多いのではないでしょうか。

私が勤務する会社も国内外含めると10万人以上の従業員がいる会社です。
基本的には、それぞれのクライアントに対して、プロジェクトベースでコンサルティングやモノづくりのサービスを提供しており、R&D、営業、開発、法務、財務・・・と多岐にわたる分業化が進んでいます。

入社したての頃は、配属された分野での専門性を追求していくことが求められますし、専門性の追求自体は入社して10年以上経っている今も変わらず求められるのですが、分業化された組織を超えて横の目を持てるか、がないと、苦しくなってくるんです。

比較的規模が小さくて一人で全てやらないと回らない環境や、自営・経営者が強いと思うのは、初めから全体を気にする力が身に付くところですよね。
やはり個人としての生き抜く力がより得られやすいのは、自営力だろうとはつくづく感じます。

とはいえ、別に分業前提の企業に勤めていたとしても、やればいいだけの話だと思うのです。「分業前提の企業に勤めているからできない」は、何とも格好悪い言い訳で、どこにいようがやる人はやるし、やらない人はやらない。

ましてや、分業前提の企業に勤めていたとしても、横の組織の役割認識とかがないと本当に苦しくなってきます。
逆に言うと、自分の役割の専門性以外に、別組織の役割を認識することで、より全体像が見えて楽しくなってくる面がありますし、「やらないとダメだから」という動機だと私はなかなか動けないのですが、「これを知ると楽しいから」ということが実感値として分かると、気になって色々と調べてしまう特性があります。

そして、自分が会社のどの役割でいようが、切って切り離せない関係にあるのが「お金」ですね。何をするのも「お金」がかかりますから、会計や財務の基礎知識ってどこにいても役立つと思うのです。

私は大学時代に専攻していた経営学部で、基礎知識レベルの会計や財務を学び、あとは実務と会社の研修、独学で学んだくらいですが、ちゃんと自分の言葉で書いておかないと定着してるのかどうか分からなくなってきました。

会社経営とか営業系の仕事をしているとか、会計やファイナンスって実務でやってないと、なかなか受け身で学ぶ機会って少ないと思うんですよね。だから、ちゃんと自分でも整理しておこうと思います。

今回の参考文献はこちらです。


会計とファイナンスの違い

本書では、財務のことを実務の人がより使う言葉として「ファイナンス」と言っているのでそれに従いますが、「会計とファイナンスの違いは何ですか?」と聞かれて、全員が即答できないのではないでしょうか。

私もパッと明快な切り口が頭に浮かんでこなかったのですが、会計は「利益」を、ファイナンスは「キャッシュ」を扱っています。他の切り口では、会計はあくまで過去の記録、ファイナンスは未来予測です。

会計の世界では、会計基準や経営者判断で多少まちまちになるのに対して、ファイナンスが扱うキャッシュは、銀行残高があるかないか、という1つの要素しかないので、より分かりやすくシビアな世界であるとも言えます。

よく言われる「黒字倒産」みたいなのも同じですね。会計報告上はどれだけ利益が出ていても、その分のキャッシュ回収が遅れて運転資金がショートして支払が滞ることで、企業は倒産してしまいます。

本書では、「ファイナンス」により着目して基本的な考え方を解説してくれています。

貸借対照表(BS)の右側に注目するのがファイナンス

財務三表の一つ、貸借対照表では、どうしても目に見えやすい左側、つまり「資金の運用サイド」に目が行きがちです。例えば、調達してきた資金を使って、どれだけのお金を設備投資して、今どれくらいの固定資産になっているかとか、どれくらいが手持ち現金として残っているか、です。
これらは、全て「目に見える」ものですね。

一方で、BSの右側、つまり「資金の調達サイド」に注目するのがファイナンスです。そのお金をどうやって調達してきたか、です。
大きくは、銀行からの借入のような「有利子負債」と、株主から資金調達する「株式発行」に分けられます。
大事なのは、資金の供給サイドからの視点で見ると、これらは2つとも「投資」だということです。

株式は分かるけど銀行の借入金も?と思う方もいるかもですが、銀行が企業に融資するのも、融資時に取り決めた契約内容に応じて、元本+利子のリターンを期待してお金を貸していますね。だから、銀行の融資も、銀行視点では「投資」の一つだと言えるのです。

株主と銀行では、投資先への期待が違う

株式も借入金も、企業にとっては代表的な資金調達手段になるわけで、その供給側の株主と銀行は共に「投資者」ということになるのですが、それぞれの期待値が違います。

株主の場合、投資先の企業の売上が上がれば上がるほど、リターンとしての配当金(インカムゲイン)が上がる可能性が高まりますし、株価そのもの(キャピタルゲイン)が上がる可能性も高まります。
だから株主は、企業の売上がどのくらい上がるか、ということに注目しているわけで、企業は株主の期待に応えないと自社の株価が下がり、事業に必要な資金調達が十分にできない可能性があるため、売上向上を毎年目指し続けますね。

一方で銀行は、融資契約時に定めた元本と利子以上のリターンはないため、融資先の企業がちゃんとこれらを支払えるか、に注目します。
だから、融資先企業が売上を大きく上げるためにリスクテイクした投資に踏み切るよりも、大きくチャレンジしなくても良いから、着実に収益を上げて欲しい、とより安定性志向になるわけです。

資金調達コストが株式の方が高くなる理由

このように株主は、より企業が売上を上げて、いろんなコストが引かれて最終的に残る配当金を大きくして欲しい、と望むわけですが、銀行の借入金や社債と違い、業績が悪い時には無配となる可能性もあります。

つまり、株式の方が投資リスクが高いということであり、その分リスクプレミアムとしてより高いリターンを求めてくるというわけです。資金調達する企業にとっては、株式の方が資金調達コストがその分高いということですね(=株主資本コスト)。銀行からの借入金返済時に支払う利子などの債務コストと、この株主資本コストを加重平均して求めたものがWACC(ワック、Weighted Average Cost of Capital)で、投資家視点に立つとWACCは投資家が会社に期待するリターンとも言えます。

企業視点では、当然WACCが低い方がよく、WACCを下げるためにはリスクプレミアムを下げる、つまり、その会社の投資リスクが低いと思ってもらわないといけないんですね。この資金調達コストを下げるための活動こそが、まさしくIR(Investor Relation)の役割なわけです。投資家のリスク認識を下げるために、適切なタイミングで正しい企業情報を公開する必要があるのです。

ちょっと長くなってきたので、一旦前編として今日はこのあたりで止めようと思います。
続きは明日の後編をお楽しみにしていてください!

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