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#294 ルールよりもバリュー設定。バリューは実行管理して初めて効果が生まれる
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
今日は、マネジメントやプロジェクト運営をテーマした話です。
数年前から、「パーパス経営」という言葉が色んなところで注目されるようになりました。企業が何のために存在し、どのような価値創造を行うのか。ビジネスを行う上での「信念」を指針として実践する企業経営のことです。
「パーパス経営」という言葉の浸透により、職場などで「ビジョン・ミッション・バリュー」の定義を行った方も少なくないのではないでしょうか。
分かりやすい絵があったので下図に貼り付けていますが、パーパス経営の上位概念にくる「パーパス」が企業の存在意義を示すWhyに該当するのに対して、どこを目指すのかを示す「ビジョン」、何をするのかを示す「ミッション」、どのように実現するのかという「バリュー」を定義するというものです。
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https://j-net21.smrj.go.jp/qa/org/Q1464.html
私の職場でも、各部署で自分たちの「ビジョン・ミッション・バリュー」は何か?ということを複数回にわたり議論して、事業部内の他部署に発表して、実践する、ということを過去に行いました。
こういう活動って、一時のブームに乗っかるだけで終わってしまうというか、一時的には盛り上がるんだけど、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で、一過性の取り組みになりがちではないでしょうか。
ただ、以前参画していたチームで、この「ビジョン・ミッション・バリュー」がかなり有効に働いていたのを経験しました。その時を振り返り、プロジェクト運営やチームビルディング、マネジメントにおいて、何が大切なのか?ということを改めて振り返ってみたいと思います。
というのも、パーパス経営の考え方は、若い世代を中心に、今後ますます当たり前になっていきそうです。自分より若い人たちと話していても「地球や他人に無理をさせて高収入をもらうのはダサい」という価値観が考え方のベースにあるのを感じますし、「事業で何をやっているかよりも、働き方や一緒に働く人とのチームワーク」がより重視されているという印象を持ちます。
だから、人的供給制約においてより大切な、若い人に選ばれ続ける=持続性があるチーム作りのためにも、一度考えていることをまとめておきます。
カッコいいビジョンより、共感できるバリュー設定
まず、先ほど示したパーパス経営の三角形のうち、上にある「パーパス」や「ビジョン」、「ミッション」の部分までは、基本的にはマネージャーが明確に方向性を示すことが大切だと考えています。
マネージャーが示したものに対して、メンバーが共感できるかどうかで議論するのは良いと思いますが、そもそもその組織の存在意義を定義するきっかけは、その組織をどうしたいかというマネジメントの思想や哲学によるものであって、みんなでワイワイ話してゼロから決めよう!という類のテーマではないからです。
一方で、一番下のベースの部分にある「バリュー」については、現場で動く一人一人のHowの部分に関わりますから、実際にメンバーが共感できて、日々の行動指針としたいと感じるものについて、よりメンバー中心で定義していくことに価値があるものと捉えています。
このバリューがそもそも共感できない場合、いくらそのチームが壮大な存在意義とビジョンを掲げていたとしても、日々の個人の動き方に反映されない、すなわち現場に浸透しないことになり、「掲げて終わり」の意味のないものになってしまいます。
物事をグレーなままにしておく勇気
私は、自身の経験から「バリュー設定」の部分が現場の活力に最も影響を与えると感じているのですが、そもそも日本人が大好きな「ルール」よりも「バリュー」の方が、より実効性が高いという考えがあります。
そもそも、ルール作りというのは、何かの物事に対して「白黒はっきりさせる」ことですよね。そして「このルールを逸脱したらペナルティを与える」みたいな話ですが、何でもかんでも禁止事項だけ増えていくことで喜ぶ人はいないし、生きにくくなってしまうだけですよね。そして、そんなに多くのルールを覚えきれませんから、そのうち形骸化してしまうのがオチです。
そもそも、組織がとる行動を決定する際に、それぞれの個別具体ケースに応じて、「こういうときはA、こうだったらB」みたいに細かく規定することは無理があります。時代の変化が激しく、次から次に前例がないケースが出てくる現代において、全ての事象に対して厳格で整合性の取れたルールをイチイチ決めて行くことには限界があります。
だから、「白黒はっきりさせるよりも、あえてグレーなままにしておく」という決定が実は大事で、行動規範となる価値基準を決めておくことのほうが有効なのです。この価値基準がまさに「バリュー設定」になるということです。
バリュー浸透に不可欠なポジティブフィードバック
私の実体験から、バリューが現場によく浸透していたと感じた具体例をご紹介します。
数年前に参画していたチームなのですが、そこでのミッションは「海外での仕事で新規事業を立ち上げる」というものでした。
コロナ禍の中ということもあり、そもそも渡航もあまりできない中での難題だったわけですが、チームの士気はかなり高くて、若くて優秀な人たちばかりで一緒に仕事をしていて本当に気持ちが良いチームでした。
実際に掲げたバリューは「Ownership, Proactive, Fail Fast」の3つで、ただ会社に言われたから考えて設定した、というものではなく、こうやって数年経っても覚えているように、かなり浸透していたと思うんです。
で、なぜここまで浸透できたのか?というと、「ポジティブフィードバック」と掛け算で実行していたから、というのが理由でした。
当時、Teamsのチャネルで「褒める、称える、感謝するチャネル」というのを作り、日々の仕事の中で、メンバーがお互いに「バリューに沿った動きができている」と感じた時に、「○○さんのこういう動きがFail Fastの体現でした!」というようなフィードバックを頻繁にするようにしていました。
褒められたり、感謝されてモチベーションが上がる人は少なくないと思いますが、日常生活の中であえて褒めるとか、称える機会ってなかなか取りにくい面もあると思うんです。
しかし、チャットベースでもいいから、お互いに小さなことでも気付きがあった時に「言葉にして本人に伝える」ことをチームの習慣にしていったことで、自己効力感の高い、一人一人が自律したチームに変わっていったのを感じています。
特に、新規事業検討なんて、基本的には失敗するじゃないですか。
成功するまで諦めずに失敗し続けるから結果的に成功するだけであって、1回の成功の前には100回以上の失敗が重なっているのが普通ですよね。
それは頭では分かっているんだけど、実際に失敗が続いたら落ち込んでしまったり、モチベーションが続かなくなってしまうのも人間です。それを「信念が足りない」とか「気合いが足りない」という言葉で片付けてしまうのは簡単ですが、マネジメントの役割である以上、人の気合いに依存しないモチベーション作りの設計が必要です。
そこで、チームで決めたバリューの発揮度をお互いにチャットで伝えることを始めたのですが、面と向かって言うよりもハードルも低いですし、やはり褒められると嬉しいものです。
ぜひ「いいかも?」と思われた方は、導入されてみることをオススメします!
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