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本を読む時間はないのに、ミームを見る時間はあるモヤり
「本を一冊も読まないという人が、この5年で急激に増えているー」
つい先日、そんなニュースが駆け巡りました。
記事の要点は以下。
-1カ月に読む本の冊数を聞いたところ、「(1冊も)読まない」と答えた人が63%に上り、08年度の調査開始以来で最多となった
-1冊も読まないとしたのは08年度は46%、13年度は48%、18年度は47%(→それが今回の調査で63%に急増)
2008年から始まった調査によると、「1ヶ月に一冊も読まない」という人が、前回までは5割弱の水準で推移していました。それが今回、いきなり6割越えまでアップしています。
そういえば最近、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という本も話題になっていましたね。
今回は、そんな「本を読まない人が増えている背景」について、詳しく分析してみました。
なぜ本を読まない人が増えているのか
(本のタイトルのままですが)…なぜ、私たちは本を読まなくなっているのでしょうか?記事によると、その理由としてこんなことが書かれています。
-理由として「情報機器で時間が取られる」が最多で44%を占め、18年度(37%)より7ポイント増えた
-一方、SNSやインターネット記事など本以外の情報を「毎日読む」としたのは75%だった
本を読む時間がなくなっているのは、情報機器=スマホのせい。そのスマホによって私たちは、SNSやインターネット記事を読むために多くの時間が取られている、というわけです。これは多くの人が共感するところではないでしょうか。
「本以外の情報を毎日」が75%
一方で気になるのは、75%にも上る「本以外の情報を毎日読む」という人たちのリアルです。「SNSやインターネット記事など」とありますが、その具体的なアクセス先・内訳は、どうなっているのでしょうか。
別の調査を探ってみたところ、NHK放送文化研究所が2021年に、スマホユーザーが「スマホの中で何をしているのか」をまとめていました。これをみると、多くの人が「SNS」と「動画」に半分近い時間を費やしていることがわかります(少なくとも1時間〜多い人で5時間以上も!)。逆に「オンラインニュース」へのアクセスは、平均で「1日18分」しかありません。ちなみに、これは老若男女、すべてのスマホユーザーの平均です。10代から高齢者まで、スマホを持つ多くの人が、スマホを開いては「SNS」と「動画」にアクセスしているわけです。
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本を読む時間が「情報機器に取られている」と答えた私たちは、その情報機器を使って、多くの時間を「SNS」や「動画」に充てている実態が見えてきました。では、この「SNS」や「動画」の正体は何なのか・・・?
本を読む時間を奪っている黒幕は…
私はその正体が、「ミーム」と呼ばれるコンテンツだと考えています。
「ミーム」=インターネットミーム(Internet meme)とは、インターネット上のウェブサイトや掲示板、SNSを通して拡散され、話題になった文章や画像、動画のことです。流行しているコラージュ画像や略語といった多くの人が共通で認識しているネタなど、人が人のまねをして広がっていく様子や拡散される現象そのものを指している場合もあります(参考)(また、naotosさんのnoteでは「ミームの本来的な意味」について、ChatGPTとのやりとりで深掘りされています)
ミームといえば、今年の流行語にもなりそうな「猫ミーム」が有名ですね。少し前に、私は家族ぐるみで「猫ミームを3日間見続けたらどうなるか?」という実験をおこないました。その意外な結果はこちらからご覧いただけます。
いずれにしても、私たちは本を読むのをやめ、代わりにスマホの中でひたすら「大量のミーム」を見続けているのです。いえ、見続けさせられている、と言うべきでしょうか。
私はこれまで、テレビ局・ウェブメディア・新聞社とメディア業界を渡り歩きながら、さまざまな角度から、この情報社会を見つめてきました。その中で、「ミーム」という強力な中毒性を持つ・・・ある意味で「最強」のエンターテイメントコンテンツに、大切な視聴者や読者、ユーザーを奪われていく光景を目の当たりにしてきました。
ユーザー側の視点に立てば、本来私たちが取り組むべきあらゆる活動(仕事や勉強、趣味など)のための時間が、意図せず、無意識のうちに、「ミーム」に奪われてしまっている。
もちろん、ほんのわずかな時間にもスマホを使うとしたら、それは生活を楽しい時間で埋めるためかもしれません。心から楽しいと感じ、ミームを求めている人もいるかもしれません。ニュースなど見なくとも、ミームを見続けられれば幸せだと感じられる人も、中にはいるかもしれません。
しかし、果たして「ミームのために費やす時間」は、例えば本を読んだり、身近な人と会話をしたりする時間をゼロにしてでも、手に入れるべき「価値のある」時間と言えるでしょうか?
ついついスマホに目を奪われ、1日の中でも特に長い時間(先のデータで言えば、多い人で5時間以上も)を浪費してしまい、「後悔」を感じた経験は、私だけではないはずです。
そのような問題意識から、私は現在もメディア業界に身を置きながら、情報社会の実態や課題を研究しています。
大量のミーム情報をシャワーのように浴びせ続けられるこの時代に、私たちは自分の意思で、自分の行動をコントロールする術はあるでしょうか。
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![Yuya Suzuki/鈴木 雄也](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/168828563/profile_3140123daba7ff0181e21166840cd8b4.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)